米国西海岸のAOR

2021年3月 6日 (土)

Journey『Infinity』1978

1970年代後半、それまでの英国ロック、米国ロックに無かった全く新しいスタイル、響きのロック・バンドが幾つか出現した。音的には、インストルメンタル中心で、音の仕掛けは大がかりで展開もワイド、雰囲気としてはプログレッシブ・ロックに近い。が、ムーディーでアーバンでクールなところがプログレとは異なるイメージ。

それまでのクロスオーバー・ジャズとプログレッシブ・ロックを融合した様な音作り。そして、それに乗るボーカルは、ユニゾン&ハーモニーが美しく、ソロ部もエコーが効果的にかかっていてAOR的な響きが聴き心地満点。しかし、ファンクネスは皆無。ポップ性が高く、ジャンル的にはロック寄り。当時、僕達は「プログレ的なAOR」と呼んでいた。

ジャーニー(Journey)というグループがある。サンタナ・バンドに参加していたニール・ショーンとグレッグ・ローリーを中心として、1973年にサンフランシスコで結成された。1977年、二代目専任ヴォーカリストとしてスティーヴ・ペリーが加入して、ジャーニーの音は劇的に変化する。

1978年早々にリリースされた4作目のアルバム、Journey『Infinity(邦題:夢幻との遭遇)』(写真左)で、突然、ジャーニーの音が劇的に変化し完成する。プログレ系ロックバンドとしての作風も維持しつつ、ユニゾン&ハーモニー美しく、伸びの良いヴォーカルを活かした、ダイナミックな音作りの楽曲を前面に押し出して、以降のジャーニーの音の個性を確立した。いわゆる「プログレ的なAOR」な音世界である。
 
Journey_album1  
 
当時、このジャーニーの出現には驚いた。それまでに無い音だったこと、そして、当時、流行しつつあったAORの雰囲気にピッタリでありながら、ソフト&メロウでは無い、意外とハードロック的な音作り。それでいて、楽曲の展開は意外と複雑でプログレ的。大学時代、授業の合間など、行きつけの喫茶店で寛ぎながら聴き流すのに最適な「プログレ的なAOR」。

そして、1981年、ニール・ショーン(ギター)、スティーヴ・ペリー(ボーカル)、ロス・ヴァロリー(ベース)、スティーヴ・スミス(ドラム)、ジョナサン・ケイン(キーボード)のラインナップで、この「プログレッシブ・ロック的なAOR」の傑作を物にする。その傑作とは『Escape』(写真右)である。

このアルバムは、ジャーニーが「プログレ的なAOR」を追求し、遂にその頂点を極めたアルバムと言える。「Don't Stop Believin'」「Open Arms」といった、代表曲が収録され、かつ、アルバム全体を通して内容充実、実に出来が良い。全米1位を獲得。ジャーニーと言えば『エスケイプ』、と言われる位に、ジャーニーの看板的なアルバムに仕上がっている。

音的には、『Infinity』で確立されたジャーニーの音世界を段階的に洗練していった、その最終到達点がこの『Escape』であろう。「プログレ的なAOR」が完全に確立されている。ハードロックな一面もありつつ、聴き心地が良く、展開が大掛かりでありながら耳につかない。ハードなAORのひとつの完成形である。

当時、日本では心ない評論家から「商業ロック」なるレッテルを貼られ、正しいロックは「パンク」、軟弱なロックは「AOR」と決めつけられた。しかし、良い音楽は良い音楽。あれから34年経って、振り返って聴いてみても、やはり良いものは良い。まさに、このジャーニーは、米国ロック史上にその名を残すバンドであった。
 
 
 

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2021年2月 9日 (火)

『TOTO』(宇宙の騎士) 1977

我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」の推しジャンルの1つが「AOR」。和製英語で「アダルト・オリエンテッド・ロック」。1970年代後半から1980年代前半に流行った「大人向けのロック」という意の音楽ジャンルである。

まあ、1970年代後半から1980年代前半というと、私、松和のマスターは「高校〜大学から社会人なりたて」時代で、AORはリアルタイムに体験している。特に大学時代、聴き始めたジャズに苦戦しながら、閉口して耳休めに、このAORのジャンルのアルバムをよく聴いていた。

今日、久し振りに聴いたのが『TOTO』(写真左)。1977年にロサンゼルスでスタジオミュージシャンをしていたデヴィッド・ペイチとジェフ・ポーカロを中心に結成されたグループ「TOTO(トト)」のデビュー盤である。1978年のリリース。邦題は「宇宙の騎士」。とにかくこの頃のCBSソニーの邦題は趣味が悪い。

もともとはボズ・スキャッグスのバックなども務めたスタジオ・ミュージシャンの集団なので、TOTOの音楽性は、ずばり「AOR」とされるが、これはちょっと短絡的な解釈だろう。

このデビュー盤を聴くと、1970年代のロック、例えば、ハードロックやプログレッシブ・ロックの音楽的な要素をしっかりと内包しており、優れたアレンジの下、演奏テクニックを前面に押し出したインストの展開というフュージョン・ジャズの要素も漂う。
 
 
Toto-first
 
 
いわゆるポップ・ロック出身のAORとは異なる、インストを中心とした演奏の展開をベースに聴かせる、ややフュージョン・ジャズ寄りのアプローチが個性的である。ポップスのバリエーションとしてのAORとはちょっと違う、ややマニアックな音楽性が実に魅力である。

このデビュー盤に収録された全10曲のうち、なんと4曲がA面にシングル・カットされている。ほとんど切り売り状態である。ちなみに、9曲目の「Hold the Line」は、米国ビルボード誌のシングルチャートで5位を獲得している。

音的にもアレンジが優れているだけ、ソリッドな音作りも相まって、今の耳にもほとんど古さを感じない。3作目以降、商業ロック化として、今でも軽んじられる傾向にあるTOTOではあるが、このデビュー盤と次作の『Hydra』は別格。内容的にも優れたAOR盤として十分に評価されるべきアルバムである。

ちなみに、バンド名の由来について,バンド結成以前、メンバーが来日した時に、トイレで「TOTO(東洋陶器)」のロゴを見たことがきっかけという噂があるが(本人達も似たようなコメントはしているが)、これは悪い冗談だろう(笑)。
 
 
 
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2021年1月22日 (金)

Far Cry『The More Things Change』1980

AORとは「アダルト・オリエンテッド・ロック」の略。和製英語である。落ち着きのあるお洒落な大人のロックって感じの音楽ジャンル言葉。

このAORの世界で「スティーリー・ダン・フォロワー」という分類がある。1970年代後半、AORの時代。AOR時代到来の前からAORな音世界を現出していた、スティーリー・ダン。その音世界を踏襲したミュージシャンやグループが「スティーリー・ダン・フォロワー」。

その「スティーリー・ダン・フォロワー」の代表格が「Far Cry(ファー・クライ)」。フィル・ゴールドストンとピーター・トムの2人によるこのデュオ、スティーリー・ダンをポップにした音世界が特徴。とにかく聴き易い。聴いていて心地良い。AORの良いところを凝縮した、AORの完成形の様な音世界。そのFar Cryがリリースした唯一のアルバム。

そのアルバムとは、Far Cry『The More Things Change』(写真左)。1980年のリリース。プロデューサーとして、ビリー・ジョエルなどを手がけたプロデューサーのフィル・ラモーンやスティーリー・ダンのアルバムに名を連ねるエンジニアのエリオット・シャイナーを迎えている。それだけでも、このアルバムは「スティーリー・ダン・フォロワー」として、成功を約束された様なもの。

アルバムの冒頭「The Hits Just Keep On Comin'」を聴けば、AORのサウンドの本質が良く判る。AORの見本のような素晴らしい曲ですね。この曲のみならず、Far Cryの音世界には「潮風」を感じます。ベイエリア・サウンドといった感触でしょうか。
 
 
Far_cry  
 
 
本家のスティーリー・ダンはアーバンなサウンドが旨ですが、そこが、Far Cryの独特の個性です。このベイエリアの雰囲気が良いんですよね。なぜか、サンフランシスコを思い出します(笑)。米国西海岸なサウンドですね。

バックを固めるミュージシャンも、ロブ・マウンジー、スティーブ・カーン、ラルフ・マクドナルド、クリス・パーカーなど玄人好みのフュージョン・ジャズ系ミュージシャンを揃えて、テクニック溢れる、ちょいと捻りを効かせた、それはそれは素晴らしい演奏を聴かせてくれます。

そして、なんと、このアルバムには、ご本家スティーリー・ダンから、ドナルド・フェイゲンがバック・ボーカルでゲスト参加しているんですね。確かによく聴いていると、あれれ、と思いますよ、「スティーリー・ダン・フォロワー」の耳の持ち主ならば(笑)。

アルバムのジャケット・デザインも素敵です。赤いシグナルが印象的。このジャケット、ずっと見ていても決して飽きない。なんか、とっても良い感じなんですよね。このアルバムに詰まっている、ベイエリア・サウンド的な、少し翳りがあるけど、夕暮れ時な、暮れなずむような音の雰囲気を良く表している。

大学時代、よく聴いたなあ、このアルバム。行きつけの喫茶店で、下宿で、研究室で、古墳に向かう車の中で、このアルバムをよくかけたなあ。ベイエリアなサウンド。米国西海岸なサウンド。このアルバム越しに、僕達は「ウエストコースト」を感じていた。

ふふっ、僕自体が「スティーリー・ダン・フォロワー」である。このアルバムは今でも大好きだ。
 
 
 
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2020年10月 8日 (木)

Boz Scaggs『Middle Man』 1980

AORと言えば、日本の音楽シーンでの造語で、AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックと定義された。パンク・ムーブメントなどの若者向けのラウドなロックとは方向性が異なった、クロスオーバー的なサウンドと大人向けの落ち着いたヴォーカルが特徴。「ソフト&メロウ」という音の雰囲気を表す流行語と共に、1970年代後半から1980年代前半にかけて流行った。

当時、僕達は大学生。リアルタイムでもろにこの「AOR」のムーブメントを体験した訳で、確かに、ロックを聴く場合、パンクなどは、粗野で単純な「ガキのロック」として遠ざけ、行きつけの喫茶店や研究室では、専ら、このAORかフュージョン・ジャズが鳴り響いていた。

AOR系のミュージシャンとしては、ボズ・スキャッグスやクリストファー・クロス、74年以降のシカゴ、TOTO、ボビー・コールドウェル、70年代後半の米国西海岸ロックのカーラ・ボノフやリンダ・ロンシュタット、J.D.サウザー等、思いつくだけでもこれだけのミュージシャンの名前がズラーッと並びます。まあ、とにかく流行りましたね。

特に、僕のお気に入りは「ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)」。彼の鯔背な風貌と男気溢れるボーカルが大好きだった。「粋」という言葉がピッタリのAORだった。今回、5年ぶりにメンフィス録音のソウルカヴァー集をリリースしており、まだまだ第一線で活躍している姿は頼もしい限り。これまたこのアルバムの内容が抜群なんだが、それはまた後日語るとして・・・。 
 
 
Middle_man   
 
 
1970年代後半から1980年代前半の「AORの時代」のボズ・スギャッグスのアルバムの中で一番ヘビー・ローテーションだったのが、1980年リリースの、Boz Scaggs『Middle Man』(写真)。全編、AORを代表する名曲・名演がズラリ。AORとは何かと問われれば、僕は迷わずこのアルバムを紹介します。

クロスオーバー的なサウンドと大人向けの落ち着いたヴォーカルが特徴とは言うものの、演奏はロックのビートがしっかりと効いていて、AORにありがちだった「ソフト&メロウ」一辺倒な「軟弱なロック」とは一線を画すもの。ソウルフルで、うっすらとR&Bな雰囲気が漂い、決めるところはバッチリ決める、メリハリの効いた演奏と「こぶし」の効いたボーカルが素晴らしい。

冒頭の「JoJo」や2曲目の「Breakdown Dead Ahead」を聴くと、あの頃のAORな音を思い出す。この2曲はAORな音を代表する名曲だろう。8曲目のバラード「Isn't It Time」のボズの男気溢れるソフト&メロウなボーカルも、当時のAAORな音を代表するもの。

6曲目の「Do Like You Do In New York」などは、重心の低いビートとファンキーな女性ボーカルが絡まった洗練されたハードロックの様なヘビーなAOR。7曲目の「Angel You」も前奏からビートがガッチリ効いた、お洒落なアレンジではあるが、意外と硬派なロックンロール。この辺が「ソフト&メロウ」一辺倒な「軟弱なロック」とは一線を画すところ。

TOTOのメンバーやレイ・パーカーJr.、デヴィッド・フォスター、サンタナらの強力なバック・アップを得ての、ハードなAOR名盤として、長年愛聴しています。AORな名盤と聞いて、どうせ、ソフト&メロウな甘ったるい内容なんだろうと敬遠する「聴かず嫌い」は損をします。ロック色も程良く、AORとしてのスタイリッシュな音作りとのバランスが良好な名盤です。
 
 
 
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2020年9月 2日 (水)

Karla Bonoff『Restless Nights』 1979

AORブームは1970年代後半。AORと言えば、ボズ・スギャッグスとかクリストファー・クロスとか、TOTOとか、メジャーな全国区な名前が浮かぶが、僕達がAORブームをリアルタイムで体感していた頃、そう大学時代真っ只中の頃、米国西海岸ロックの「粋な大人のロック」にもターゲットを拡げて、AORにどっぷり浸かっていた。

AORブームの1970年代後半、米国西海岸ロックでは、女性シンガー、女性シンガーソングライター(SSW)の台頭が際立っていた。その米国西海岸ロックの歌姫(女性シンガー)と言われて、頭に浮かぶのは「カーラ・ボノフ(Karla Bonoff)」。

米国西海岸の清純派SSWで、西海岸ロック歌姫の筆頭、リンダ・ロンシュタットにたくさんの曲を提供しています。このリンダとボノフって、実に対象的で、リンダが薔薇の花とすれば、カーラは百合の花。リンダが明るい人気者なら、カーラは内気で目立たない、でもしっかり者のタイプ。同じ曲を歌っても、リンダはパンチがあって天真爛漫、カーラは、ひっそりと清楚な佇まい。僕は、この「清楚な佇まい」ってところが好きですね〜。

Karla Bonoff『Restless Nights(ささやく夜)』(写真)。さて、ここでは、カーラの代表的なAORなアルバムをご紹介しましょう。そのアルバムは、カーラ・ボノフの最高傑作の呼び声も高いソロ2作目。1979年発表の傑作。米国西海岸のミュージシャン総出演って感じの、実に豪華なサポート陣によって、いかにも「米国西海岸ロック」といったサウンドが「たまらない」。
 
 
Restless-nights  
 
 
豪華なサポート陣とはどれほどのものか。ドラムスのラス・カンケルを始め、ワディ・ワクテル(g)、ダニー・クーチ(g)、デビッド・リンドレー(g)、アンドリュー・ゴールド(p,g)などを配し、バックボーカルに、ドン・ヘンリー、J.D.サウザー、ウエンディ・ウォルドマン、ジャッキー・デシャノンを招集という、今から思えば、とにかく贅沢の贅を尽くしたサポート陣である。

当時、僕は大学生で、LPを部屋に飾りつつ、そのジャケットを眺めながら、何度も何度も良く聴きましたね〜。冒頭アップテンポの米国西海岸ロック丸出しの「Trouble Again(涙に染めて)」も大好きですが、なんといっても、極めつけの名曲は、やはりラストの「Water Is Wide(悲しみの水辺)」。

海の向こうにいる恋人への思いを歌ったトラディショナルナンバーで、これほど切ない歌は無い。涙無くしては聴けない名演である。カーラの歌はしみじみとして、ゲストのガース・ハドソンのアコーディオンや、ジェイムズ・テイラーのギター&バックボーカルも雰囲気が良い。いや〜、思い出しますな〜、あの頃を。

とにかく、米国西海岸ロックの雰囲気をベースに、とても西海岸らしい、爽やかで優しくてシャープな大人のポップ・ロックが満載のアルバムで、今でも聴くと口元が緩みます。米国西海岸ロックの「粋な大人のロック」の香りをプンプンさせる、素晴らしい出来映えの一枚です。
 
 
 
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2020年7月19日 (日)

J.D.Souther『Black Rose』 1976

一般的には、昨日ご紹介した『You're Only Lonely』の方が圧倒的に有名なアルバムですが、アルバム全体の出来や内容はこちらの J.D.Souther『Black Rose』(写真)のほうが、断然、優れている。僕はこのアルバムが、J.D.サウザー(J.D.Souther)の最高傑作だと思っています。

J.D.サウザーは「6人目のイーグルス」とも呼ばれ、イーグルスの幾つかナンバーも、フライ&ヘンリーとの共作で何曲も提供しているソングライターの存在でした。そういう意味で、シンガーソングライターとしてのJ.D.サウザーが、このアルバムで息づいています。

音楽的にも、当時流行の様々な要素を取り入れていて、とても楽しい音作り。1曲目の「Banging My Head Againstthe Moon」のレゲエのリズムにサウザーのボーカルが重なると、たちまち、ウエストコースト・ロックのレゲエ版に早変わり。J.D.サウザーには、揺るぎの無い個性がある。
 
 
Black_rose  
 
 
2曲目の「If You Have Crying Eyes」の前奏のフェンダー・ローズの音なんぞ、もうどう聴いても、ウエストコースト・ロック。聴いた瞬間、身もだえしたくなるような哀愁漂うフェンダー・ローズの音です。3曲目の「Your Turn Now」のようにフォークっぽい曲も、しっかりテンション張っていて、「だれた」感じが無くて、聴き応えがあって素敵です。

アルバム全体の音作りも、西海岸らしい乾いた音の雰囲気の中に、これまた西海岸らしい「独特の哀愁感」誘うエコーがかかっていて良い雰囲気ですし、とりわけ、サウザーの声が良い。サウザーの声が効果的に響いて、ウエストコースト・サウンドを確固たるものにしています。

レゲエがあったり、フォーク調あり、ロック調あり、とにかく幅広い音楽性のなかで、サウザーのボーカルひとつで、一気にウエストコースト・ロックの世界ににつれていかれる、そんな見事なアルバムです。サウザーの才能の凄さを感じさせるとともに、明らかに彼のキャリアの頂点に位置する作品です。1976年のリリース。
 
 
 
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2020年6月28日 (日)

J.D.Souther『You’re Only Lonely』 1979

FMのエア・チェックが中心だった大学時代。FMから、この人のこの歌が流れてくると、即座に聞き耳を立てたものだった。「You're Only Lonely」。J.D.サウザーである。J.D.サウザーといえば、僕たちの世代ではこの曲、そして、極めつけは、このアルバムだろう。

J.D.Souther『You're Only Lonely』(写真)。1979年の作品。1950年代後半のノスタルジーな雰囲気漂う、ミドルテンポのロックンロール・バラード。でも決して古くない。アレンジは、1970年代後半のソフト&メロウなAOR風のアレンジが実に良い。今でも決して古さを感じない秀逸なアレンジ。

J.D.サウザーは、「6人目のイーグルス」とも呼ばれ、イーグルスの幾つかナンバーも、フライ&ヘンリーとの共作で何曲も提供しているソングライターの存在でしたが、このアルバムの表題曲が70年代後半のAORブームにうまく乗って大ヒット、シンガーとしても注目される存在となりました。何を隠そう、この私も、このアルバムのヒットで、J.D.サウザーという存在を、やっとこさ、はっきりと認識した次第でした。

確かに、この冒頭を飾る「You're Only Lonely」は良い。ロイ・オービソンのパクリと言っちゃえば、それはそれで、それまでなんですが、曲を彩るコーラスワークや「なりきりのバック」は、その雰囲気をバッチリ伝えていて、ウエストコースト・ロックの雰囲気からはちょっと外れるんですが、これはこれで僕は大好きです。
 
 
Youre-only-lonely
 
 
その後、1991年だったか、ホイチョイ・プロの邦画「波の数だけ抱きしめて」 で使われて、再び人気を博したが、それからでも、もう約30年が経ってしまった。それでも、この盤『You're Only Lonely』は、僕達にとって、永遠の「AOR名盤」である。

アルバム全体の雰囲気は、LP当時、A面だった1〜4曲目は、当時のAORブームに乗った、ウエストコースト・ロックというよりは、ちょっとトロピカルなAOR的な名曲・名演。ロックとして楽しむよりは、AORとして「トロピカルなムード」を楽しむ感じ。J.D.サウザーは米国西海岸ロックの重鎮ということを考えると、ちょっと違和感のある音作り。でも、これがまた良い雰囲気なので困ってしまう(笑)。

僕は、それより、LP当時、B面だった5〜9曲目の方が、ウエストコースト・ロックっぽくて好きですね。曲調がどれも同じ感じなので、ちょっと単調に聞こえるという向きもありますが、それはそれで、これまた、ウエストコースト・ロックっぽくて良いのではないでしょうか。爽快感豊かな、軽快なソフト・ロックが心地良いですね〜。

この『You're Only Lonely』、僕にとっては、大学時代、聴きまくったAORなアルバムとして、ちょっと別格のJ.D.サウザーです。米国西海岸のSSWの名盤というよりは、米国西海岸系のAORの名盤として位置づけた方が座りの良いアルバムです。ジャケットも単純だけど、この単純さがまた「雰囲気」で良い感じです。
 
 
 
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2020年5月11日 (月)

Christopher Cross『Another Page』 1983

1979年、突如としてヒットチャートに躍り出た『Christopher Cross(南から来た男)』。まずもって、クリストファー・クロスとは何者か? で、当時、僕達は大混乱した。しかも、覆面ミュージシャンとしての登場。更に僕達は混乱した。

トレンディーなメンバーの強力バックアップによる「ソフト&メロウ」なサウンドは、70年代後半から80年代前半にかけて一世を風靡したAORサウンドの極致と言って良いものでした。良質な「大人のロック」的な演奏が素晴らしかったですね。反面、これはクリストファー・クロスは大変だぞ、って思いました。このアルバムを越える次作の創作は並大抵では無い。

さすがに、セカンド・アルバムの登場まで3年の月日が必要でした。1983年に満を持してリリースされたクリストファー・クロスの第2作『Another Page』(写真左)。フラミンゴのアップが凛々しいジャケットと共に、クリストファー・クロスは還ってきた。

これがまあ、良い内容なんですよね。リリース当時、早い時期に手に入れましたが、このアルバムを聴いた時、ちょっとした感動を覚えました。あのAORサウンドの極致と言って良いファースト・アルバムの内容を凌駕している部分がそこかしこに聴くことが出来る。素晴らしい才能だなあ、って大いに感心したのを昨日の事の様に覚えています。
 
 
Another-page
 
 
このセカンド・アルバムでも、多くの名うてのミュージシャン達がバック・アップしています。まずは、TOTOのスティーブ・ルカサー。流れる様な印象的なフレーズのギター・ソロがそこかしこにフューチャーされています。加えて、TOTOからジェフ・ポーカロ、マイク・ポーカロ等も参加しています。なんだかTOTO御用達って感じ(笑)。

このアルバムでは米国西海岸ロックのメンツが多く参加しています。ドン・ヘンリー、マイケル・マクドナルド、J.D.サウザー、ジェイ・グレイドンなどの名前がクレジットされています。3曲目の「What Am I Suppose To Believe」では、西海岸ロックの歌姫、カーラ・ボノフとのデュエットを聴かせてくれます。これがまた良い。カーラの声が良い。一聴してカーラだと直ぐ判る。

米国西海岸ロックの面々の参加の影響もあるのか、このセカンド・アルバムはには、爽快感、疾走感が感じられる、健康的なAORといった雰囲気が実にグッドです。AORと言えば、アーバンな雰囲気漂う大人のロック、って感じが定番かと思いますが、このクリストファー・クロスのセカンド・アルバムはちょっと違う。でもこの爽やかな太陽の光を感じる健康的な雰囲気、僕は好きです。

アルバム全体の音作りは、メリハリが効いて、音のエッジが立ち気味の、デジタル録音が主流となった1980年代を感じさせるもの。でも、リズム・セクションは、まだまだ人間的な雰囲気が強く漂っていて、聴いていて実に味がある。やはり、何時の時代もリズム・セクションは人間が担うべきだ。
 
 
 
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2020年4月29日 (水)

『Christopher Cross』 1979

AOR。懐かしい響きである。Audio-Oriented Rock(オーディオ・オリエンテッド・ロック)、Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)の略であり、音楽のジャンルの一つ。日本では、Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)と訳される。

AORの時代をリアルタイムで生きた男の一人として言いたい。AORを「軟弱ロック」と評する人は、もう一度、その頃の名盤を聴き直してみると良い。

米国で「Audio-Oriented Rock」と解釈された。こちらの解釈の方が、僕にとっては座りが良く、 「音を重視するロック(音志向ロック)」とは、ただ、がさつに主張するだけのパンクムーブメントとは違い、歪みのない楽器音と怒鳴らない、落ち着いた声が特徴の「成熟したロックの一形態」だったと僕は思っている。

『Christopher Cross(邦題:南から来た男)』(写真左)を聴いてみれば良い。丸くて柔らかい極上サウンド。天使のようなハイトーンボイスが特徴で、一躍AORを代表するアルバムとして一世を風靡した、AORの名盤である。

僕は当時、大学生だった。この『南から来た男』を初めて聴いたのは、僕は硬派なロック少年からの脱皮を図るべく、ジャズにアプローチをし始めた頃、1979年のことである。リアルタイムでこのアルバムを初めて聴いた時、かなり心を動かされた。とにかく美しい。演奏もボーカルの一流の響き。テクニックも素晴らしく歌心もある。
 
 
Christopher-cross  
 
 
一方、「こんなアルバムに騙されてはいけない」と強く思った。純ジャズの難解さに手を焼きながらも、その良さが何となく感覚で判り始めた頃である。ロックに戻ってはいけない、と思った。しかも、当時は「何て軟弱なロックなんだ」と微かに思ったのも事実。

が、「とにかく美しく、演奏もボーカルも一流の響きで、テクニックも素晴らしく歌心もある」というところが響いて、実に「困った」。夜な夜な聴きながら「こんな音楽に浸っちまってええのか」と後ろめたさを感じながらも、ヘビーローテーションになった。

純ジャズを聴き疲れた耳への「耳休めなんだ」という言い訳で、この『Christopher Cross(邦題:南から来た男)』は良く聴きました。良い音楽は良い音楽だから、素直に聴けば良いのにね。大学時代は、その若さ故、なにか「高邁な」理屈付けが必要で、今から思えば、自分のことながら「ウザい」時代だったなあ、と苦笑することしきりである(笑)。

ハイトーンボイスが心地良く、収録されたどの曲も、雰囲気があってとても優れていると思います。売れて当たり前のアルバムですね。

バック・コーラスを紐解くと、ニコレット・ラーソン、マイケル・マクドナルド、ヴァレリー・カーター、ドン・ヘンリー、JDサウザーが参加。ギター・ソロでは、ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドンなどが参加する、マニアックな楽しみも満載で、初心者からマニアまで、「気軽に楽しむ」〜「ディープに楽しむ」まで、楽しみ方も様々なバリエーションを誇る、奇跡の様な名盤です。

このハイトーンボイスって、どんな人が歌っているのか、興味津々でしたが、クリストファー・クロスが素顔を初めて世間にさらした時、その顔写真(写真右)を見て、至極納得したというか、改めて、クリストファー・クロスに親近感を持ったというか、改めて、クリストファー・クロスのファンになりました。味のある、渋いキャラクターのミュージシャンだと思います。
 
 
 
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2020年4月18日 (土)

Boz Scaggs『Down Two Then Left』 1977

僕達が学生時代、リアルタイムで聴いたAOR。その中核を担うロック出身のミュージシャンの一人が「ボズ・スギャッグス(Boz Scaggs)。そのボズが1970年後半から1980年にかけてリリースしたAORな盤、「Slow Dancer」「Silk Degrees」「Down Two Then Left」「Middle Man」については、僕は密かにボズのAOR4部作と名付けている。

Boz Scaggs『Down Two Then Left』(写真左)。1977年11月のリリース。ボズのAOR4部作の第3弾。ファンキー&メロウがメインのAOR盤。アーバンテイストなアレンジがなかなか「粋」に響きます。

ソウル・テイストを強化すべき、キーボード&作曲において、当時頭角を現し出したマイケル・オマーティアンにイニシアティヴを預け、リズム隊もオマーティアン自身のユニット、リズムヘリテッジの面々が中心に請負い、明らかに前作よりロック色が交代し、代わりにファンキー&メロウさが増しています。

この「ファンキー&メロウなAOR」というのが、ボズ・スギャッグスのAORの個性で、ここにロック色をしっかりクロスオーバーさせていて、あくまで「ロック」な音作りに軸足を残しているところが、僕達の好みと合致するところで、学生時代、このボズのAOR4部作は、かなりの「ヘビロテ」な盤として鳴り響いていました。
 
 
Down-two-then-left  
 
 
バックの演奏のアレンジは、ファンキー&メロウな面を強化した故に、ライトなフュージョン・テイストがしっかり漂っていて、フュージョン・ジャズの延長線上、ポップでソフト&メロウなフュージョン・ミュージックとして楽しむことが出来ました。

バックの面々は、それはそれは「AORの強者ども」の饗宴といったもので、これだけの面子がやったら、そりゃぁ良いAORなアルバムが出来るでしょうよ、と呆れてしまいます(笑)。特に、ギター(Steve Lukather、Jay Graydon、Ray Palker Jr.)、ベース(David Hungate)、ドラムス(Jeff Pocaro)という「お馴染のメンバー」で、ボズの基本的な音作りをガッチリとサポートしています。

思えば、1974年リリースの『Slow Dancer』から始まったボズのAOR化でしたが、この3作目『Down Two Then Left』で、ほぼ完成したと言えるでしょう。

惜しむらくは意味不明なジャケットデザインと若干のセールスの不振(それでもビルボード最高位11位なんですけどね)で4部作の中で影のちょっと薄い盤なんですが、意外と良い内容ですよ。この盤もやはりAORの好盤の一枚でしょう。
 
 
 
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