『Bobby Caldwell』 1978
1970年代後半、ある日突然、降って湧いたように出現し、ロック・シーンを席巻したAOR。恐らく、日本独特の音楽ジャンル言葉だと記憶しているが、ここでのAORとは「アダルト・オリエンテッド・ロック」の略である。
1970年代後半に出現した「AOR」と呼ばれた新しいロックの形態。そこはかとなくファンクネス香る「ソフト&メロウ」な音作り。ジャズのフレーバーが、そこかしこに漂うクロスオーバー的なサウンド。そして、卓越した優れた演奏力が加わって、所謂「大人のロック」を現出している。アウトローな、反抗の象徴の様な、メッセージ性を帯びた従来のロックでは無い、都会的で大衆的でソフィストケートされたロックという形容が当たっているのではないか、と思います。
1970年代後半と言えば、僕は大学時代真っ只中。ドライブミュージックやリゾートミュージックとして、はたまた、ジャズの聴き込みの合間に、このAORのアダルトでメロウな雰囲気に、ドップリと浸っていましたねえ。こんな商業主義的で大衆的なロックに浸りきってええんか、と自分を責めながらも、このAORの心地良いサウンドに惹き込まれていました。まあ、やはり曲が良くて演奏が良かったんで、それはそれで仕方が無いことだったということで・・・。
AORの名盤は、と問われれば、まず、この『Bobby Caldwell(Evening Scandal)』(写真左)。このアルバムは、ボビー・コールドウェルの1978年のデビュー作。もともと原題は『Bobby Caldwell』と記憶していますが、今では『Evening Scandal』の方が通りが良いようです。どうもこの『イブニング・スキャンダル』は、日本でのアルバム発売時の邦題だっだようですね。
当時、シングルカットされてヒットした「Special To Me」や「What You Won't Do For Love(風のシルエット)」といった、リズミカルでソウルフルな曲を聴けば、もう気分は「AOR」=「大人のロック」である。特に「風のシルエット」はクールでジャジーなサウンドと渋いボーカルが特徴で、ジャズやフュージョンの曲と同列で繰り返し聴いていた。
今の耳で聴いても、とにかく都会的でソフィストケートされた、ボビー・コールドウェルの独特な声と切ないメロディがとても心地良い。当時は、AORとフュージョン・ジャズを分けて聴いてはいたが、今の耳で聴くと、同じ性質、同じ方向性を持った音なのでは、と思う。ジャズに寄ったら「フュージョン・ジャズ」、ロックに寄ったら「アダルト・オリエンテッド・ロック」という感じだ。
アルバム・ジャケットも、実に「AOR」していて、ボビー・コールドウェルのAORな音が聴こえてきそうな、なかなか優れもののジャケット・デザインだと思います。そうそう、AORのアルバム・ジャケットって、そこはかとなく「粋」で「洒落た」ものが多いんですよね〜。
AOR好きにとっては定番中の定番であるこのアルバムは、AORというジャンルのロックの特徴・個性がギッシリと詰まっています。つまり、この『Bobby Caldwell』は「AORとは何か?」という質問への返答に持ってこいのアルバムです。う〜ん、これはこのアルバムを聴いて貰わなければ最終的に判らんかもしれんなあ。
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