Boz Scaggs

2020年10月 8日 (木)

Boz Scaggs『Middle Man』 1980

AORと言えば、日本の音楽シーンでの造語で、AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックと定義された。パンク・ムーブメントなどの若者向けのラウドなロックとは方向性が異なった、クロスオーバー的なサウンドと大人向けの落ち着いたヴォーカルが特徴。「ソフト&メロウ」という音の雰囲気を表す流行語と共に、1970年代後半から1980年代前半にかけて流行った。

当時、僕達は大学生。リアルタイムでもろにこの「AOR」のムーブメントを体験した訳で、確かに、ロックを聴く場合、パンクなどは、粗野で単純な「ガキのロック」として遠ざけ、行きつけの喫茶店や研究室では、専ら、このAORかフュージョン・ジャズが鳴り響いていた。

AOR系のミュージシャンとしては、ボズ・スキャッグスやクリストファー・クロス、74年以降のシカゴ、TOTO、ボビー・コールドウェル、70年代後半の米国西海岸ロックのカーラ・ボノフやリンダ・ロンシュタット、J.D.サウザー等、思いつくだけでもこれだけのミュージシャンの名前がズラーッと並びます。まあ、とにかく流行りましたね。

特に、僕のお気に入りは「ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)」。彼の鯔背な風貌と男気溢れるボーカルが大好きだった。「粋」という言葉がピッタリのAORだった。今回、5年ぶりにメンフィス録音のソウルカヴァー集をリリースしており、まだまだ第一線で活躍している姿は頼もしい限り。これまたこのアルバムの内容が抜群なんだが、それはまた後日語るとして・・・。 
 
 
Middle_man   
 
 
1970年代後半から1980年代前半の「AORの時代」のボズ・スギャッグスのアルバムの中で一番ヘビー・ローテーションだったのが、1980年リリースの、Boz Scaggs『Middle Man』(写真)。全編、AORを代表する名曲・名演がズラリ。AORとは何かと問われれば、僕は迷わずこのアルバムを紹介します。

クロスオーバー的なサウンドと大人向けの落ち着いたヴォーカルが特徴とは言うものの、演奏はロックのビートがしっかりと効いていて、AORにありがちだった「ソフト&メロウ」一辺倒な「軟弱なロック」とは一線を画すもの。ソウルフルで、うっすらとR&Bな雰囲気が漂い、決めるところはバッチリ決める、メリハリの効いた演奏と「こぶし」の効いたボーカルが素晴らしい。

冒頭の「JoJo」や2曲目の「Breakdown Dead Ahead」を聴くと、あの頃のAORな音を思い出す。この2曲はAORな音を代表する名曲だろう。8曲目のバラード「Isn't It Time」のボズの男気溢れるソフト&メロウなボーカルも、当時のAAORな音を代表するもの。

6曲目の「Do Like You Do In New York」などは、重心の低いビートとファンキーな女性ボーカルが絡まった洗練されたハードロックの様なヘビーなAOR。7曲目の「Angel You」も前奏からビートがガッチリ効いた、お洒落なアレンジではあるが、意外と硬派なロックンロール。この辺が「ソフト&メロウ」一辺倒な「軟弱なロック」とは一線を画すところ。

TOTOのメンバーやレイ・パーカーJr.、デヴィッド・フォスター、サンタナらの強力なバック・アップを得ての、ハードなAOR名盤として、長年愛聴しています。AORな名盤と聞いて、どうせ、ソフト&メロウな甘ったるい内容なんだろうと敬遠する「聴かず嫌い」は損をします。ロック色も程良く、AORとしてのスタイリッシュな音作りとのバランスが良好な名盤です。
 
 
 
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2020年4月18日 (土)

Boz Scaggs『Down Two Then Left』 1977

僕達が学生時代、リアルタイムで聴いたAOR。その中核を担うロック出身のミュージシャンの一人が「ボズ・スギャッグス(Boz Scaggs)。そのボズが1970年後半から1980年にかけてリリースしたAORな盤、「Slow Dancer」「Silk Degrees」「Down Two Then Left」「Middle Man」については、僕は密かにボズのAOR4部作と名付けている。

Boz Scaggs『Down Two Then Left』(写真左)。1977年11月のリリース。ボズのAOR4部作の第3弾。ファンキー&メロウがメインのAOR盤。アーバンテイストなアレンジがなかなか「粋」に響きます。

ソウル・テイストを強化すべき、キーボード&作曲において、当時頭角を現し出したマイケル・オマーティアンにイニシアティヴを預け、リズム隊もオマーティアン自身のユニット、リズムヘリテッジの面々が中心に請負い、明らかに前作よりロック色が交代し、代わりにファンキー&メロウさが増しています。

この「ファンキー&メロウなAOR」というのが、ボズ・スギャッグスのAORの個性で、ここにロック色をしっかりクロスオーバーさせていて、あくまで「ロック」な音作りに軸足を残しているところが、僕達の好みと合致するところで、学生時代、このボズのAOR4部作は、かなりの「ヘビロテ」な盤として鳴り響いていました。
 
 
Down-two-then-left  
 
 
バックの演奏のアレンジは、ファンキー&メロウな面を強化した故に、ライトなフュージョン・テイストがしっかり漂っていて、フュージョン・ジャズの延長線上、ポップでソフト&メロウなフュージョン・ミュージックとして楽しむことが出来ました。

バックの面々は、それはそれは「AORの強者ども」の饗宴といったもので、これだけの面子がやったら、そりゃぁ良いAORなアルバムが出来るでしょうよ、と呆れてしまいます(笑)。特に、ギター(Steve Lukather、Jay Graydon、Ray Palker Jr.)、ベース(David Hungate)、ドラムス(Jeff Pocaro)という「お馴染のメンバー」で、ボズの基本的な音作りをガッチリとサポートしています。

思えば、1974年リリースの『Slow Dancer』から始まったボズのAOR化でしたが、この3作目『Down Two Then Left』で、ほぼ完成したと言えるでしょう。

惜しむらくは意味不明なジャケットデザインと若干のセールスの不振(それでもビルボード最高位11位なんですけどね)で4部作の中で影のちょっと薄い盤なんですが、意外と良い内容ですよ。この盤もやはりAORの好盤の一枚でしょう。
 
 
 
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Boz Scaggs『Silk Degrees』 1976

僕が密かに「AORの伊達男」と呼んでいる男がいる。その男の名前を言う前に、AORとはなんぞや、という問いに答えておく。日本で「AOR」とは、「Adult Oriented Rock (大人が心を向けたロック)」の略と解釈される。「大人向けのロック」という感じかな。1970年代中盤から1980年代にかけて流行しました。

さて、AORの「伊達男」とは、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs・写真右)のこと。ボズ・スキャッグスは、オハイオ州出身の米国ミュージシャン。AORサウンドを代表するシンガー。R&B色が濃い泥臭い音楽を中心に、サンフランシスコを拠点に活動していたが、ちっとも売れなかった。しかし、1976年、突如、大幅なイメージ・チェンジを断行、ソフィスティケートされたアルバムを出して、一躍、AORの代表格になった。

Boz Scaggs『Silk Degrees』(写真左)。1976年の作品。AORの代表的名盤の1枚。パーソナルは当時の腕利き、名うてのスタジオ・ミュージシャンが起用されている。目立ったところでは、後に「Toto」を結成する、David Paich (key), David Hungate (b), Jeff Porcaro (ds) が参加している。

これぞAORという雰囲気のアレンジが素晴らしい。ブラスの使い方、女性コーラスの使い方、弦の使い方、エレピの使い方、どれもが、後のAORアルバムに応用され尽くした数々の「定番アレンジ」がてんこ盛り。良いステレオ装置で、じっくりと聴き返すと、ほんと良くできたアレンジに感じ入ってしまう。
  
 
Silk_degrees
 
 
ボズ・スキャッグスの声は太く丸くて、少しくぐもっていてソフトな声。この声を活かすには、ポップでソフィストケートされた雰囲気が必要。そのソフィストケートされた雰囲気を出すのにはどうしたらいいか。ロック・ファンのみならず、一般の人々にアピールするにはどうしたらいいか。FMで取り上げられてバンバン、オンエアされるにはどうしたらいいか。を考え抜いて考え抜いて、このアルバムにある「秀逸なアレンジ」が生まれたんだろう、と思う。

この『Silk Degrees』、ブラスと弦、女性コーラスを大々的に前面に押し出したおかげで、ロックのアルバムというよりは、ちょっと硬派なアメリカン・ポップ的な雰囲気になってしまって、ロック・ファンからすると、ソフト&メロウな世界へ行き過ぎた感じは否めない。しかし、それがかえって、ロック・ファンというマニアックな世界から飛び出して、一般の人々にも十分にアピールし、当時としては爆発的に売れた。AORの初期の代表的なアルバムになり、ボズ・スキャッグスの代表盤となった。

LPのB面のラストに収録された「We're All Alone(二人だけ)」という曲は、実に良い曲である。この曲を初めて聴いた時、良い曲だなあ、と感じ入ったのを覚えている。しかしながら、曲としてはとても良く出来ているんだが、この曲だけはアレンジがいただけない。弦が、あからさまに出過ぎていて、どうしても、なんだかチープな感じがしてならない。弦を入れたら良いってもんじゃない。

とはいえ、この『Silk Degrees』、AORの代表的名盤の一枚という事実には変わりが無い。Billboard Hot 100で3位、R&Bチャートとディスコ・チャートで5位に達し、同曲はグラミー賞において最優秀R&B楽曲賞を受賞。実績も申し分無し。今の耳にも十分に鑑賞に耐えるソフト・ロックの好盤です。 
 
 
 
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