ECM 1003 : Paul Bley with Gary Peacock
Paul Bley『Paul Bley with Gary Peacock』
track1-5 Recorded April 13, 1963
Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)
track6-8 Recorded May 11, 1968
Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Billy Elgart (ds)
(Tracklist)
1. Blues
2. Getting Started
3. When Will the Blues Leave?
4. Long Ago (And Far Away)
5. Moor
6. Gary
7. Big Foot
8. Albert's Love Theme
このアルバムは、ポール・ブレイとゲイリー・ピーコックが、1963年と1968年に行なったセッションが収録されている。ちなみにドラムは1963年のセッションがPaul Motian、1968年のセッションがBilly Elgartです。
ポール・ブレイのピアノは、極めて理性的、理知的。ピアノの響きと旋律で聴かせるタイプのピアノですが、フリー・ジャズな要素が色濃く入っていて、硬質な緊張感が漲るのは、その為だと思います。フリー・ジャズの要素による硬質な緊張感故に、なにかのついでに、気軽に聴くことのできるピアノではありませんが、その「哲学的」なパキパキなピアノは、後に引きますね。癖になります。
ゲイリー・ピーコックのベースは「素晴らしい」の一言。伝統的なジャズ・ベースの雰囲気を残しながらも、じっくりと聴き耳を立てると判るのですが、今聴いても何か新しい、いわゆる「尖った」フレーズが散りばめられています。普通に弾いても良いところを、少し「捻らせて」弾き進めるところに、ピーコックの矜持と個性を感じます。
「Blues」や「When Will The Blues Leave」などオーネット・コールマンの作品の演奏が見事で、伝統的なジャズのスイング感と、当時流行したフリー・ジャズの硬質な緊張感とが、バランス良くミックスされて、かなりの聴き応えです。
ちなみに、このアルバムは、ECMレーベルでの録音ではありません。稲岡邦彌著「ECMの真実」の中で、その件が述べられています。ECMレーベルの総帥、マンフレート・アイヒャーの再三再四の録音要請にも関わらず、ポール・ブレイは首を縦に振らなかったそうです。代わりに、ブレイが、私蔵の録音テープをアイヒャーに送りつけ、アルバム化されたのが、この『Paul Bley With Gary Peacock』だそうです。
ECMの録音では無いとは言え、不思議なのは、このアルバムの音が、しっかりと「ECMレーベルの音」になっていることです。特に、ブレイの「響きを押さえたピアノの音色」に、その特徴を強く感じます。恐らく、テープからミックスダウンする時、若しくはマスタリングする時に、ECM独特のイコライジングやエコーを施されたのだと思います。じゃないと、ここまで「ECMの音」にはならないですよね。
このアルバムは、ジャズ者中級者以上向けのアルバムです。決して、ジャズ者初心者向けではありません。でも、このアルバムを聴いて、その特徴、その個性に触れることが出来るようになれば、ジャズ者として楽しみは広がります。
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