George Wallington『Complete Live at the Caf Bohemia』
ジャズはライブに限る。大衆音楽の範疇ではあるが演奏テクニックに優れ、コード進行は複雑、そして、再現性の無い、一発瞬間芸なところが魅力のジャズ。そんなジャズの真価を感じるにはやはりライブである。
70年代ロックの世界ではライブは鬼門だった。スタジオ盤はスタジオで編集加工されているので、出来が良い。しかし、その編集加工されたものをライブで再現出来るかと言えば、なかなかそうはいかない。70年代ロックではスタジオ盤に感じ入って、ライブに足を運んで、そのショボさに幻滅すること も少なくなかった。
しかしジャズは違う。確かにライブなので「出来不出来」はあるが、70年代ロックとは次元が違う。やはり、ジャズを楽しむにはライブに足を運ぶに限る。
とは言え、そんな優秀なライブを聴かせるライブハウスはそんなに多くはない。しかも、それなりに有名なミュージシャンだとチャージ料も値が張る。そういう時はライブ盤を購入して、家のステレオにて、擬似ライブハウスとして楽しむのも手である。
ジャズのライブ盤は多々あるが、最近、手に入れて、ちょっとヘビー・ローテーションになっているライブ盤がある。George
Wallingtonの『Complete Live at the Caf
Bohemia』(写真左)。
1955年9月の録音。パーソネルは、Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as),
George Wallington (p), Paul Chambers (b), Art Taylor
(ds)。うへ〜っ、錚々たるメンバー。錚々たるメンバーの若かりし頃である。
このアルバムは、先にリリースされ、ライブ盤として定評のある『George Wallington Quintet at the Bohemia』(写真右)のコンプリート盤。CD2枚組。今のところ、米国のみでの発売。2007年に突如再発された。
もともと『George Wallington Quintet at the Bohemia』は、ジャズ・ライブ盤としては定盤。録音年は1955年。ジャズのトレンドは、ビ・バップからハード・バップへ移行。このアルバムは、若かりし頃のDonald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Paul Chambers (b) のテクニック溢れる、溌剌としたライブ演奏を捉えている。
収録されたどの演奏もライブ感溢れる優れものばかり。ビ・バップの様にテクニックを競うアドリブもあれば、ハード・バップの特徴である、良くアレンジされた知的なハーモニーやユニゾンがあり、それぞれのソロは技術を尽くし、その優れたアドリブが堪能出来る。初期ハード・バップ時代の優れたライブ盤と言える。
リーダーの George Wallingtonのピアノはビ・バップ調でありながら、優雅な響きが特徴。決して下品に弾かない。決してテクニックをひけらかさない。優雅な響きと確かなテクニックでしっかりとハード・バップなピアノを聴かせてくれるところがまた良い。
この『Complete Live at the Caf Bohemia』はCD2枚組。総演奏時間は2時間ちょっと。冒頭の「Johnny One Note」からラストの「Bumpkins (Alternate Take)」まで、熱気溢れる、実に楽しいハード・バップな演奏が聴ける。
リクエストの無い、暇な時間帯のジャズ喫茶でマスターの一存で全曲をずっと流したい、そんな感じのするライブ・アルバムです。1955年のライブ・ハウス「カフェ・ボヘミア」にタイム・ワープした様な錯覚を感じる位に臨場感溢れる演奏が実に楽しいです。
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