« Cedar Walton『Cedar!』 | トップページ | Archie Shepp『Ballads For Trane』 »

Charlie Rouse & Red Rodney 『Social Call』

ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第9弾である。このアルバムは、ジャズ喫茶でかけても、まず誰の演奏なのか、恐らく大多数のジャズ者の方が判らないと思う。僕も最初判らなかった。

端正でテクニック確かで歌心のある「芯のあるテナー」。もろビ・バップな音だけど柔らかで、なかなか小粋な音色を奏でるトランペット。趣味の良い、 硬質ながら流れるような正統派ピアノ。確実で硬派でしなやかなビートを供給するベース。硬軟自在、緩急自在な堅実なサポート、テクニック確かなドラム。

ビ・バップの様な、疾走感、テクニック溢れる演奏を繰り広げる冒頭の「Little Chico」。ハードバップらしさ溢れるミッドテンポでファンキーな、2曲目「Social Call」。この2曲の演奏だけで「これって誰のアルバム? パーソネルは?」と心穏やかで無くなること請け合い。
 
でも、きっと誰だか判らない。再び、アップテンポでファンキー溢れる、テナーとペットのユニゾン、ハーモニーがニ クイ、3曲目「Half Nelson」。ここまで聴き進めると、もう「アカン」我慢できん。誰のアルバムなんや〜。実は僕がそうでした(笑)。
 
このアルバム、Charlie Rouse & Red Rodney の『Social Call』(写真左)。1984年録音の渋いハードバップ作品。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Red Rodney (tp), Albert Dailey (p), Cecil Mcbee (b), Kenny Washington (ds)。これぞハードバップって感じで、アグレッシブに、はたまたリリカルに、実に味わい深い演奏を聴かせてくれる。
 

Social_call

 
バラード演奏も秀逸。5曲目の「Darn That Dream」なんぞ、惚れ惚れする。情感タップリに歌い上げていくチャーリー・ラウズのテナー。まあるく優しいトーンで語りかけるように吹き上げるレッド・ロドニーのトランペット。リリカルに堅実に硬派なバッキングを供給するアルバート・デイリーのピアノ。当然、リズムセクション、セシル・マクビーの ベースとケニー・ワシントンのドラムがバックにあっての、秀逸なバラード演奏である。

チャーリー・ラウズとは誰か。伝説のピアニスト、セロニアス・モンクとの共演で最も知られるテナーサックス奏者です。ラウズはモンクとの相性が抜群でした。テクニックに優れ、スケールの広い、モンクの音にぴったり呼応して、モンクの様に予期せぬフレージングで吹くことが出来ました。
 
ですから、僕としてはモンクのバンドのテナー奏者という印象が強く、この『Social Call』の様に、端正でテクニック確かで歌心のある「芯のあるテナー」を吹くとは思わなかった。

とにかく、まずは「ラウズのテナーにビックリしながら、ラウズのテナーに酔う」一枚です。そして、ラウズの「芯のあるテナー」に、もろビ・バップな 音だけど柔らかなロドニーのペットはピッタリ。選曲もお馴染みの曲が多く、1980年代前半のフュージョン全盛時代過ぎ去り後の、上質なハードバップ演奏が聴けます。絵に描いたような「ハードバップ」な一枚とでも言ったら良いでしょうか。良いアルバムです。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

« Cedar Walton『Cedar!』 | トップページ | Archie Shepp『Ballads For Trane』 »

トランペット」カテゴリの記事

テナー・サックス」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: Charlie Rouse & Red Rodney 『Social Call』:

« Cedar Walton『Cedar!』 | トップページ | Archie Shepp『Ballads For Trane』 »

リンク

  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。
  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。
  • ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログ
    ジャズ喫茶『松和』は、ネットで実現した『仮想喫茶店』。マスターの大好きな「ジャズ」の話題をメインに音楽三昧な日々をどうぞ。このブログがメインブログです。