Hans Ulrik『Shortcuts-Jazzpar Combo 1999』
「ジャズ喫茶で流したい」特集。第16回目です。
ジャズの裾野は広い。雑誌で紹介される新譜以外にも、世界各国でジャズの新譜が多々リリースされている。マイナーな音楽ジャンルと言われる「ジャズ」。それでも、世界各国のジャズ新譜はかなりの数に上る。不思議だよな〜。利益にならないと流石にレコード会社もアルバム化しないと思うんだが・・・。
そんな多々リリースされているジャズのアルバム。たまたま、iTunesなどで試聴して、これは、と思って購入すると、これが「当たり」っていうアルバムがある。そんなアルバムの一枚が、Hans Ulrik, John Scofield, Lars Danielsson, Peter Erskineの連名のアルバム『Shortcuts-Jazzpar Combo 1999』(写真左)。
ジョン・スコフィールド(g), ピーター・アースキン(ds)の名前を見ただけで、このアルバムに触手が伸びるっていうもの。この二人の名前を見るだけで、このアルバムは普通のジャズ・アルバムではない、という直感がする。デンマークのサックス奏者ハンス・ウーリック(写真右)とラース・ダニエルソンのベースは全く知らないんですが、 ジョンスコとアースキンの名前だけで、このアルバムは、なんだか期待できる。
これが「当たり」なんですね。出だしの「About Things」で、最初に出てくるデンマークのサックス奏者ハンス・ウーリックのフレーズを聴くと「これは質の良いスムース・ジャズか」と思うんですが、その直後に出てくるアースキンのドラミングが「ただ者では無い」。アースキンのドラミングを聴くと、このアルバムは、ただ者でない、意外と隅に置けないコンテンポラリーなジャズではないか、という予感。
リズムはやや緩やか、リラックスしたビートに乗って、ハンス・ウーリックのサックスが印象的な、北欧独特の清涼感溢れるフレーズを連発する。アースキンのドラミングは実に「コンテンポラリー」。このアルバムを単なる北欧のスムース・ジャズで終わらせない。
しかし、主役は、やはり、ギターのジョンスコでしょう。ここでのジョン・スコのギターはキレまくり。鋭いナイフのように、短いフレーズやリフで攻めまくりです。決して旋律に流されない、絶対にジョンスコ風に、コンテンポラリーに「捻りまくる」。この「捻りまくり」が非常に強く、良質のジャズを感じさせてくれるんですね。
ウーリックのサックスの雰囲気は「ランディ・ブレッカー的」です。しかし、ランディの様に、パワーで吹ききるタイプではなく、繊細な表現力で勝負するタイプですね。そして、北欧独特な清涼感溢れる、拡がりのあるブロウはいかにも「欧州的」で実に個性的です。なかなか聴き応えのあるサックスです。
寒色系のアコースティック・コンテンポラリー・ジャズ。ウーリックのサックスの雰囲気が、北欧独特な清涼感溢れる、拡がりのあるブロウなので、ややもすれば「スムース・ジャズ」に傾きそうなのですが、そんな雰囲気を、グッと硬派なコンテンポラリーなジャズに引き戻しているのが、ジョンスコのギターと アースキンのドラム。そして、そこはかとなく、ラース・ダニエルソンのベースが、実にコンテンポラリーなベースなのが「決定的」。
良いアルバムです。こんなアルバムが、ひっそりと無造作に転がっているから、ジャズという世界は恐ろしい。決して、ジャズの入門本やジャズのアルバム紹介本には出てこないアルバムなんですが、これは「買い」です。実にコンテンポラリーでジャジーな雰囲気は、現代的な「ジャズ」を感じさせてくれます。
絶対に、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で流したいですね。
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