チューリップ『魔法の黄色い靴』
なにを隠そう、松和のマスターこと私は「チューリップ」のマニアである。「チューリップ」はバンド名。1972年にメジャー・デビュー。オリジナル・メンバーは、財津和夫 (vo, g, key), 吉田彰 (b), 安部俊幸 (g), 上田雅利 (ds), 姫野達也 (vo, g, key) の5人。「チューリップ」というと、ビートルズから影響を受けたメロディー・ラインとアレンジが特徴。
口の悪い方々からは「ビートルズのコピー・バンド」と言われております(笑)。メロディアスでポップな作風が特徴で、僕は単純にそこが好きです。洋楽の影を追いながらも、そこはかとなく日本的な情緒を加えているところがチューリップの「隠し味」。1973年の大ヒット「心の旅」を耳にして以来、チューリップはずっと好きなバンドのひとつ。特に、高校時代から大学時代にかけては、密かにチューリップ者として、アルバムを買い続け、聴き続けた。しかし、僕の周りには、チューリップ者はいなかったなあ。
同世代の間でも「心の旅」のヒットくらいでしかバンド名が思い浮かばない。よってアルバムを愛で、アルバムの魅力を語る友人は皆無。後に「サボテンの花」がドラマのタイアップ曲として、リバイバル・ヒットした時は、大いに溜飲が下がった思いがしたものだ(笑)。そんなチューリップのメジャー・デビューアルバムがこれ。まずはこのデビューアルバムを押さえなければ、チューリップは理解出来ない。
チューリップ『魔法の黄色い靴』(写真左)。1972年6月のリリース。当時のフォークロック・バンドのデビュー・アルバムとしては、なかなかに金のかかったもので、ダブル・ジャケット仕様に、ポスターなどが同梱されており、当時のレコード会社の期待度の高さが窺い知れる。確かに、このデビュー・アルバム、チューリップの個性がぎっしり詰まった、当時のJポップ・シーンには無かった、斬新でハイレベルでポップロックなアルバムであった。
冒頭のタイトル曲であり、デビュー・シングルでもあった「魔法の黄色い靴」が素晴らしい。この曲をFMで耳にしたのは1974年。荒井由実の ポップな曲が流れ始めている中で、この「魔法の黄色い靴」も流れていた。それまでに聴いたことが無い、しかし耳当たりの良い「コード進行」、それまでのフォーク・ソングには無い「歌い方」、新しい響きを湛えた「コーラス」。今の耳で聴いても「この曲」は斬新。フォークロックの名曲である。
2曲目の「あいつが去った日」より「千鳥橋渋滞」「ハーモニー」「おいらの気楽な商売」「私の小さな人生」と、LP時代のA面を占めるフォーク・ロックの好曲。当時のJポップ・シーンには無かった、洒落ていてポップ度の高い曲ばかりで、1970年代前半のフォーク・ソング全盛時代においては、かなり浮いた存在だった。この「洒落ていてポップ」なところがチューリップの個性。これが良い。
まだ1970年代前半は、録音の機材や録音方法も発展途上の時代、アレンジなどもテクニック不足。よって、演奏全体の雰囲気は地味で洗練されておらず、演奏の完成度はちょっと低いが、それをカバーして余りある曲のユニークさと斬新さが素晴らしい。
LPのB面の「もう笑わなくっちゃ」「言葉が出ない」「思えば遠くへきたものだ」「どうして僕は淋しいんだ」「風」の流れも、チューリップ・マニアには堪えられない内容なんですが、A面に比べると、ちょっと「力尽きた」感はあるかな。アレンジにやっつけ感があって、演奏自体も荒さが目立つ。曲自体は良い出来だけに実に惜しい。それでも、チューリップの個性はハッキリと反映されている。
そして、ラストの「大魔法の黄色い靴」には聴く度に感心する。このアルバムのタイトル曲「魔法の黄色い靴」にオーケストラのアレンジを施して、チューリップのメンバー、そして、スタッフも交えての「大合唱曲」としてリプライズしているんだが、これが素晴らしい出来。これだけ、ストリングスのアレンジに耐える楽曲もなかなか無い。やっぱりこの「魔法の黄色い靴」は名曲なんだと痛く感心したのを昨日のことの様に覚えている。
チューリップ・マニア、いわゆる「チューリップ者」の方々にはマストアイテム。Jポップ、日本のフォークロックのマニアの方には一度聴いて頂きたいアルバムではある。デビュー・アルバムだから、出来はイマイチなのではと懸念しているのであれば、全く心配はいらない。チューリップのメンバーの個性がキラキラ煌めいていて、「チューリップ者」であれば、かなり楽しめる内容である。
東日本大震災から9年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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