荒井由実『COBALT HOUR』
春になると、なぜかユーミンが聴きたくなる時がある。ユーミンといっても、松任谷由実ではない、荒井由実のほうである。ユーミンの荒井由実時代のアルバムは、ファースト・アルバム「ひこうき雲」から「ミスリム」「コバルト・アワー」「14番目の月」、ベストアルバム「ユーミン・ブランド」。春風吹いて、春ののどかな日差しの中で、フッと聴きたくなるユーミンは、僕にとってはこれ。
荒井由実『COBALT HOUR(コバルト・アワー)』(写真)。1975年6月のリリース。荒井由実の3枚目のオリジナル盤。パーソネルが凄い。荒井由実 (p, vo), 細野晴臣 (b), 鈴木茂 (g), 林立夫 (ds), 松任谷正隆 (key), 原田忠幸 (bs), 斉藤ノブ (perc), 松田幸一 (harmonica), 松任谷愛介 (fiddle), 福島てるよし、篠原国俊 (tp), 新井英治 (tb), 玉野嘉久& his fellows (strings), 山田やすひろ、早樫じゅんじ、相馬充 (fl), 今道美樹子 (harp), ハイ・ファイ・セット、吉田美奈子、大貫妙子、山下達郎、伊集加代子 (chorus)。
当時のJポップ系の名うてのミュージシャンが全員集合して、ユーミンの音世界を表現している。当時の「ロック・バンド」というか「音楽プロデュース・チーム」のティン・パン・アレーがメイン。この松任谷、細野、林、鈴木のビッグネームが並ぶ「ティン・パン・アレー」のバック演奏がポジティブで明るくノリが良く、聴いていて「ワクワク」で、思わず「心でスキップ」状態になる。コーラスには、ハイファイの3人、吉田実奈子、大貫妙子、そして、今や大御所の山下達郎が参加している。いやはや、凄いメンバーである。
このアルバムは、ユーミンのソングライティングの才能全開。加えて、松任谷正隆のアレンジが秀逸。そして、アルバム全体を通して、バックのコーラスが実に印象的で、これ若き日の山下達郎のアレンジだそうです。実際、本人もコーラスに参加して歌っていますね。
冒頭の「コバルト・アワー」は、明るくリズミカルで、これから展開される音世界を期待してワクワクする。続く「卒業写真」は、バックの印象的な演奏と歌詞が素晴らしくマッチしていて、「悲しい〜、こと〜が〜ある〜と〜」と来ると、もう駄目。しみじみして、胸が一杯になって感じ入ってしまう。まあそれだけ、個人的に悪い思い出がいっぱい詰まった歌だと言うこと(笑)。
5曲目「ルージュの伝言」は素晴らしいの一言。オールディズな雰囲気の曲調が実に小粋で、歌詞の中の主人公の女性が実に可愛い。ジブリのアニメ映画「魔女の宅急便」のオープニングにも使われていましたね(雰囲気ピッタリでした)。続くドラマチックな展開の「航海日誌」は「春の夜の海」を想起させて、歌詞の割に穏やかな展開に感心する。「少しだけ片想い」は、これからの確かな「恋」を予感させるようなポジティブな明るさに満ちていて、気分は「春」。
7曲目の「CHINESE SOUP」は季節問わずの名曲。歌詞もウィットに富み、曲も素晴らしい。9曲目の「雨のステイション」に至っては、これはもう季節は春を過ぎて梅雨。そして、ラストはなぜか唐突に、なぜ、この『コバルト・アワー』のラストに収録されたのかが未だに判らない「アフリカへ行きたい」で終わる。
理屈はともかく、春はユーミン。ふと聴きたくなるアルバムの筆頭は『コバルト・アワー』。ジャケットも、ほんのりとピンク色が入っていて、春らしいと言えば春らしい。そして、「卒業写真」「花紀行」という春の季節の曲が入っているという記憶が、春になるとこの『コバルト・アワー』を思い出させるのかも知れない。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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