チューリップ『無限軌道』
チューリップは、ビートルズ・フォロワーとしての総決算アルバムとして『僕が作った愛のうた』をリリースの後、レコード会社に押し付けられていたロック・アイドル路線と訣別、チューリップ自身のオリジナリティーとサウンドを極める、長い長いチャレンジの旅に出る。そして早々に、その決意表明的なアルバムをリリースすることになる。
チューリップ『無限軌道』(写真)。1975年4月のリリース。このアルバムは、ビートルズ・フレーバーがメインの音作りをベースとしたアイドル・バンド路線から自ら決別し、チューリップのオリジナリティーとサウンドを極める試行錯誤の旅に出る決「決意表明」みたいなアルバムである。
1曲目の『心を開いて』がその決意表明らしいナンバー。オリジナリティーの追求という点では、2曲目の『私は小鳥』と4曲目の『たえちゃん』。しかし、『私は小鳥』は、ポップな曲調を追求するあまり、当時の歌謡曲そのものになってしまった感がある。その当時、人気歌手だった『あべしずえ』が歌った曲です(あんまりヒットしなかったような思い出があるが)。
『たえちゃん』は、あまりにオリジナリティーに気を使うあまり、曲としてはまとまりが無く、ちょっと冗長になっていますが、個々の音づくりには、高く評価できるものがある。僕にとっては、初めて聴いて以来、この曲は常に隅におけない曲、隠れた名曲です。
8曲目は、18年後、リバイバルヒットとなった『サボテンの花』。このアルバムでの『サボテンの花』がオリジナル。アレンジがきめ細やかで地味なんだが、僕はこのアルバムのバージョンが一番の好み。可愛らしい曲といえば、10曲目の『ある昼下がり』。姫野さんがアコースティック・ギターをバックに、可愛く愛らしく歌う佳作です。
試行錯誤の旅を今後もずっと続けて、二度とビートルズ・フレーバーがメインの音作りをベースとしたアイドル・バンド路線には戻ってこないぞ、という決意を感じるのが最後の『人生ゲーム』。歌詞の中に、サイモンとガーファンクルの『コンドルは飛んでいく』の日本語訳と良く似た部分があるのはご愛敬。当時、チューリップは、結構悩んでいたんだな、と密かに感じてしまう。
この『無限軌道』は、チューリップが硬派なフォーク・ロック路線を走り始めた、記念すべきターニング・ポイントとなったアルバムです。内容的には、前作の『ぼくがつくった愛のうた』とは似ても似つかぬ硬派な内容に、当時のファンや評論家は面食らったようですが、僕は、この『無限軌道』の内容はウエルカム。改めて、チューリップのファンになり直しました。
ちなみに、僕は、この盤からチューリップのオリジナル・アルバムをリアルタイムで体験していくことになります。行きつけのレコード屋さんに予約を入れたのは、高校1年の3学期のことだったなあ。駅前のレコード屋に予約をいれて、発売日当日にゲットのを昨日のことの様に覚えています。
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