浪花ロック『ぼちぼちいこか』
今を去ること47年前。高校時代のことである。このアルバムを我らが映研の部室に持ち込んだのが、先代部長のN先輩。「これ聴いてみ、むっちゃおもろいで」。
上田正樹と有山淳司『ぼちぼちいこか』(写真左)。1975年の作品。冒頭の「大阪へ出て来てから」を聴けば、思わずニンマリしてしまう。大阪弁で唄うR&B(リズム&ブルース)。このアルバムを聴いて、高校生の僕は「大阪弁はロックに合う」と思った。まあ、正確には「大阪弁はリズム&ブルースに合う」である。
1970年代前半から中盤。日本人の僕達は「日本語はロックに合わない」というコンプレックスがあった。やっぱり、ロックは英語でないと、という風潮がかなり強くあって、日本語で唄うロックはかなり低く見られた。というか、日本語で唄うロックはロックでは無いと無視された時代である。
しかし、そう言われると、日本人である僕はちょっと悔しい。同じ言語でありながら、英語はロックに合って、日本語はロックに合わない。それは無いやろうと思っていた。で、この上田正樹と有山淳司『ぼちぼちいこか』である。コッテコテの大阪弁を駆使してのR&B。僕はこの『ぼちぼちいこか』を聴いて、日本語は工夫すればロックに合う、と思った。嬉しかった。
よほど嬉しかったのだろう。この『ぼちぼちいこか』をN先輩から、即日借り受けて、家でカセットにダビング。翌日から長きの間、このアルバムはしばらくの間、愛聴した。不思議なことだが、確かに大阪弁はR&Bに合う。後ろ打ちの粘りのフォービートに大阪弁がバッチリ乗る。但し、発音正しいネイティブの大阪弁に限るけど(笑)。
面白いのは、今の耳で聴くと、あれれ、と思う楽曲のオンパレード。なんだか、本場のR&Bやブルースロックの名曲に良く似ている、というか、上手くパクッている。ネットで色々な方達が指摘しているんだが、例えば、冒頭の「大阪へ出て来てから」は、Dr.John『GUNBO』の「Stackalee」に似ている。また「可愛い女と呼ばれたい」のギター・フレーズは、ブルース・トラディショナルの「Key To The Highway」に似ている。歳をとって判ることもある(笑)。
この『ぼちぼちいこか』で展開される音世界は、大阪出身のネイティブが聴いて、とことん楽しめる「1970年代の大阪」である。どの曲にも、コッテコテの大阪人がいる。「とったらあかん」とか「俺の借金全部でなんぼや」の世界は、もろネイティブな大阪人ならではのもの。笑いの引き方落とし方、どれもが大阪ならではのもの。
日常生活に根ざした音世界は、ネイティブの大阪人にはとことん楽しめる。そして、本場のR&Bを程良くカバってパクった、小粋な日本人のR&Bがここにある。今の耳で聴いても、なかなか聴き応えのある日本人のR&B。僕はこのアルバムで「日本語のロック」に自信を持った。
大阪と聞くと、ヤクザ・お笑い芸人・胡散臭い商売人等々と、他の地方の方々から揶揄された時代。そんな人間臭い大阪から現れ出でた「大阪弁のリズム&ブルース」。いわゆる「浪花ロック」。乾いたファンクネスがこれまた日本人らしい。本場のR&Bやブルースロックの名曲を上手くパクッているのも大阪らしい(笑)。
僕も、大阪人ネイティブの端くれ。この「大阪弁のリズム&ブルース」が、1975年に大阪から現れ出でたことを、大阪人として、ちょっぴり誇りに思う。大阪にはカントリー・ブルースが良く似合う。
東日本大震災から9年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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