ELPのファースト盤である。
Emerson,Lake & Palmer(以下ELPと略)。エマーソン・レイク&パーマー。1970年代ロックの、僕の最初のお気に入りである。高校に入って、部活(映画研究部)の先輩諸氏から、プログレッシヴ・ロックの洗礼を受けて、お気に入りになった初めてのバンドである。
当時は、まず、お気に入りの切っ掛けとなったライブ盤『展覧会の絵』や、当時の最新作だった『恐怖の頭脳改革』、そして、セカンド盤の『タルカス』がヘビー・ローテーションで、その他の2枚、デビュー作の『Emerson,Lake & Palmer』と4枚目の『Trilogy』は蚊帳の外だった。どちらも、高校生の若き感性には、デビュー作と4枚目の「重要性」を認識することは出来なかった。まだ、ロックを聴き始めて1年程度の「青い感性」には、ELPの「真の個性」については、まだまだ感じ取る事が出来なかった。
しかし、何時の頃からか、デビュー作の良さが、その内容が理解出来る様になってきた。ELPの個性はこのデビュー作の『Emerson,Lake & Palmer』に全てが詰まっている、と言い切っても過言では無い。なにより、ELPにとっては、このデビュー作の『Emerson,Lake & Palmer』が原点であり、実はこれが全てであった、ということが良く判る様になった。
改めて『Emerson,Lake & Palmer』(写真左)。1970年のリリース。栄えあるELPのデビュー作。ちなみにパーソネルは、Keith Emerson (key, syn), Greg Lake (b), Carl Palmer (ds)。このデビュー作がリリースされた当時、ブリティッシュ・ロックの中で一世を風靡していたのが「クリーム」。クラプトン、ブルース、ベイカーのギター・トリオで、その3人のインプロビゼーションは高く評価されていた。そんなところに、ギターをキーボードに代えて、キーボードを中心としたトリオ編成として、世に問うたのがELPである。
何より先に、このメンバー3人のテクニックがずば抜けている。特にオルガンの取り扱いに卓越したテクニックを駆使し、オルガンとは思えない分厚い音を供給するキース・エマーソン。とにかく図太い重心の低い、超弩級な重低音ベースを、これまたハイテクニックに弾き倒すグレッグ・レイク。超弩級な分厚い音の塊を一身に受けて、力の続く限りビート&リズムを供給しつづける、体力勝負ドラミングのカール・パーマ−。
この3人のテクニックがピッタリと合体し、3人の持つ豊かな音楽性が成果として結実したアルバムが、デビュー作の『Emerson,Lake & Palmer』である。当時の「カンタベリー・ミュージック」を核とした、当時のプログレッシブ・ロックのミュージシャン達の卓越したテクニックがどれほどのものであったのかが窺い知れる。
とにかく、ELPの音は分厚い。3人で演奏している音とは思えない「厚み」がある。当然、同時に「ヘビーさ」も兼ね備えており、演奏の迫力は圧倒的である。加えて、クラシックから米国ルーツ・ミュージックや前衛音楽まで、様々な音楽のエッセンスを取り入れる、音楽性の豊かさ、懐の深さは卓越している。このデビュー作に収録されている曲のひとつひとつに、様々なジャンルの音楽性が反映されており、これは実に「アカデミック」であり「理知的」。
ELPは、このグループの個性の全てを、このデビュー作に詰め込んで、次作『タルカス』より、商業ロックの世界へと突入していった。派手でメリハリが効いて、キャッチャーでないと当時の若い感性にアピールしない。そんな「セールス側の要請」を受けて、ELPは派手でメリハリの効いた「プログレッシブ・ロック」の代表格として、派手派手なパフォーマンスに身を染めていくのだ。
しかし、ELPの本質は、このデビュー作にしっかりと記録されている。今では、僕はこのデビュー作が大好きだ。ラストのフォーキーで解放感が爽やかな曲「ラッキー・マン」が象徴的。エンディングでキースの弾く、ムーグ・シンセサイザー独特のアナログな太い響きが、ファンファーレの様に「希望の明日」を感じさせてくれるのだ。
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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