後世に語り継ぐべき「タルカス」
Emerson, Lake & Palmer(エマーソン、レイク&パーマー、略してELP)は、僕の最初の「ロックのアイドル」だった。いわゆる「プログレッシブ・ロック」に属するグループだが、なんせキース・エマーソンのキーボードが凄い。ほとんどはハモンド・オルガンを弾き倒しているのだが、時折入るムーグ・シンセサイザーの音がこれまた趣味が良くて凄い。高校一年生の頃の話だが、特に、一年生の秋は「寝ても覚めてもELP」だった。
Emerson, Lake & Palmer『Tarkus』(写真)。1970年の作品。この盤は高校一年生の秋、映研のMu先輩が何の前触れもなく突如「これええよ、聴けよ」と貸してくれた。即日、カセットにダビングさせて貰った。ダビングしながら、当時のLPのA面を占める「タルカス組曲」を初めて聴いた時、鳥肌が立ったのを覚えている。キーボードを弾きまくるキースも凄いのだが、レイクの骨太なエレベも凄い、そして、体力任せにドラムを叩きまくるパーマーも凄い。
この「タルカス組曲」、ロックとクラシックの融合と形容して、全く差し支えない内容。クラシック風の組曲構成で、大仕掛けなオーケストラな展開を「キーボード=エレベ=ドラム」の編成でロックとして演奏するのだ。とにかく組曲としての構成力、完成度が非常に高い。エマーソンの作曲能力の高さ、ELPの演奏力の高さが、このロックとクラシックの融合を成功に導いている。
冷静に考えれば、この「タルカス組曲」は、明らかにエマーソンの志向で、レイクの志向では無い。ましてや、パーマーの志向でも無い。エマーソンが以前に率いていたバンド「ナイス」でやりたくて出来なかった「ロックとクラシックの融合」を、この「タルカス組曲」でやってのけた、その感が強い。それでもレイクのエレベは超絶技巧だし、パーマーのドラムはパワー全開。バンド全体で凄まじいパフォーマンスを披露している。この組曲の完成度は凄い。ロックの古典的名演として、後世に語り継ぐべき「遺産」である。
逆に、LPのB面を占める小曲の数々は、恐らくはグレッグ・レイクの志向が強いと思われる。彼はポップ・ロックのボーカリストとして売れたかった「ふし」があるのだが、確かに彼のボーカル曲についてはそれなりに雰囲気がある。が、それならば「キーボード=エレベ=ドラム」のロック・トリオで無くても良かったのでは、と思う。そういう志向を持ったレイクが、何故、エマーソンと組もうと思ったかは、僕にとっては疑問ではある。が、この小曲での演奏はどれも楽しそう。バンドの充実度合いが窺い知れる。
アルバム・ジャケットを飾る、空想の動物「Tarkus(タルカス)」のイラストも秀逸。アルバム・ジャケットも含めて、この『Tarkus』というアルバム、1970年代ロック史上に後世に渡って残る「アーティスティックな好盤」の一枚。ロックがアートであった時代の「遺産」である。しかし、いつ聴いても。このELPの演奏を聴いた後は、爽快な疲労感が残る。「体育会系プログレ・バンド」の面目躍如である。
東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
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