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2022年3月13日 (日)

遠い昔、懐かしの『地底探検』

高校時代、プログレ小僧だった僕はキーボード奏者が大のお気に入り。当時、プログレのキーボード奏者と言えば、EL&Pのキース・エマーソンとYESのリック・ウェイクマンが人気を二分していた。

僕はリック・ウェイクマン派だった。イエスの『こわれもの』と『危機』のウェイクマンのキーボードに驚き、惚れた。そして、リック・ウェイクマンのソロを聴きたくなった。そして手に入れたのが、当時、リック・ウェイクマンの最新作だったリック・ウェイクマンのソロアルバムの2枚目である。

Rick Wakeman『Journey to the Centre of the Earth』(写真左)。邦題『地底探検』。1974年1月18日、ロンドン・ロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行われたロンドン・シンフォニー・オーケストラとの競演コンサートのライブ録音盤。

ジュール・ヴェルヌの「地底探検」をテーマにした作品である。壮麗なオーケストラとコーラス隊をバックに従え、荘厳なクラシックな音をバックに、リック・ウェイクマンのシンセサイザーが鳴り響く。「ロックバンド・混声合唱のための協奏交響組曲」とネットで言い得て妙な表現があった。まさにその通り。この音世界の基本はクラシック。クラシックでいう「交響組曲」。

このアルバムの宣伝の触れ込みは「リック・ウェイクマンがロンドン・シンフォニー・オーケストラ等と創り上げた荘厳かつ重厚な音の絵巻」。当時の表現を借りると「ロックとクラシックの融合」。当時、音楽的にも評価が高く、全英アルバムチャート1位を記録している。

しかし、クラシックとコーラスのパートについて、シャープで洗練された様な印象は無い。どちらかというと、中庸な昔ながらのクラシック音楽とコーラスという雰囲気。懐かしさは感じるが音的には古い。このオーケストラとコーラスの「どんくささ」が何とも言えず、癖になる。聴き易いと言えば聴き易い。中庸と言えば中庸。

 
Journey_to_the_centre_of_the_earth

 
しかし、このライブ盤の購入当時、高校生だった僕は、この『地底探検』のクラシックとコーラスのパートについては全く評価していない。ちょっと「どんくさい」んですよね〜。演奏の合間合間にナレーションが入っていたりで、ロックやクラシックの演奏とは少し趣が異なる。ロックとクラシックを程良く融合させた、映画のサウンドトラックを聴いているようでもある。

ゲイリー・ピッグフォード・ホプキンスをはじめとするロックバンドとしてのボーカルのパートは、キャッチャーでシンプルな旋律が印象的。このボーカルの部分が「上手くは無いが記憶に残るボーカル」なのである。メロディがキャッチャーで歌い方がシンプルなところが「上手くは無いが記憶に残るボーカル」に貢献している。

当時のLPに同梱されていた日本語ライナー・ノートのよると、もともとこの『地底探検』、ロンドン交響楽団とのオリジナル公演は1時間40分だったので当初はレコード2枚組み、リック・ウェイクマンによる220ページのブックレットに数枚のスライド同梱、円型ジャケットという計画だったようですが、当時のオイルショックなどの影響で収録時間45分、LPレコード1枚、見開きジャケットに数ページの写真集という体裁になったとのこと。 

聴き通してみると、アルバム全体の流れについて、確かに切って張った様な「ぎこちなさ」が残る。なるほど、LP2枚組の音源をLP1枚分の縮小したんや。アルバムを聴き通して、なんだか物足りなさが残るのは、このような背景があるからなんやね。なるほどなあ。

このライブ盤は紛れもなく「ロックとクラシックの融合」の成果ではあるが、基本的に、リック・ウェイクマンのキーボードがとことん「映える」というところが最大の聴きどころ。交響楽団、混声合唱団をバックに、リック・ウェイクマンのシンセが浮かび上がる。このライブ盤は、リック・ウェイクマンのキーボード、特にシンセサイザーをとことん愛でることが出来るライブ盤である。

1975年1月には来日公演も実現している。実は、僕はこの来日公演を大阪の厚生年金会館で観ている。懐かしい。ちなみに、この1975年の来日時のインタビューにおける質問と回答は、当時からリック・ウェイクマンのファンの間では有名ですよね。質問「オーケストラをバックに弾くというのは気持ちが良いでしょうね?」、ウェイクマンが答える「請求書が来るまではね」(笑)。
 
 

東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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