遠い昔、懐かしの『地底探検』
高校時代、プログレ小僧だった僕はキーボード奏者が大のお気に入り。当時、プログレのキーボード奏者と言えば、EL&Pのキース・エマーソンとYESのリック・ウェイクマンが人気を二分していた。
僕はリック・ウェイクマン派だった。イエスの『こわれもの』と『危機』のウェイクマンのキーボードに驚き、惚れた。そして、リック・ウェイクマンのソロを聴きたくなった。そして手に入れたのが、当時、リック・ウェイクマンの最新作だったリック・ウェイクマンのソロアルバムの2枚目である。
Rick Wakeman『Journey to the Centre of the Earth』(写真左)。邦題『地底探検』。1974年1月18日、ロンドン・ロイヤル・フェスティヴァル・ホールで行われたロンドン・シンフォニー・オーケストラとの競演コンサートのライブ録音盤。
ジュール・ヴェルヌの「地底探検」をテーマにした作品である。壮麗なオーケストラとコーラス隊をバックに従え、荘厳なクラシックな音をバックに、リック・ウェイクマンのシンセサイザーが鳴り響く。「ロックバンド・混声合唱のための協奏交響組曲」とネットで言い得て妙な表現があった。まさにその通り。この音世界の基本はクラシック。クラシックでいう「交響組曲」。
このアルバムの宣伝の触れ込みは「リック・ウェイクマンがロンドン・シンフォニー・オーケストラ等と創り上げた荘厳かつ重厚な音の絵巻」。当時の表現を借りると「ロックとクラシックの融合」。当時、音楽的にも評価が高く、全英アルバムチャート1位を記録している。
しかし、クラシックとコーラスのパートについて、シャープで洗練された様な印象は無い。どちらかというと、中庸な昔ながらのクラシック音楽とコーラスという雰囲気。懐かしさは感じるが音的には古い。このオーケストラとコーラスの「どんくささ」が何とも言えず、癖になる。聴き易いと言えば聴き易い。中庸と言えば中庸。
しかし、このライブ盤の購入当時、高校生だった僕は、この『地底探検』のクラシックとコーラスのパートについては全く評価していない。ちょっと「どんくさい」んですよね〜。演奏の合間合間にナレーションが入っていたりで、ロックやクラシックの演奏とは少し趣が異なる。ロックとクラシックを程良く融合させた、映画のサウンドトラックを聴いているようでもある。
ゲイリー・ピッグフォード・ホプキンスをはじめとするロックバンドとしてのボーカルのパートは、キャッチャーでシンプルな旋律が印象的。このボーカルの部分が「上手くは無いが記憶に残るボーカル」なのである。メロディがキャッチャーで歌い方がシンプルなところが「上手くは無いが記憶に残るボーカル」に貢献している。
当時のLPに同梱されていた日本語ライナー・ノートのよると、もともとこの『地底探検』、ロンドン交響楽団とのオリジナル公演は1時間40分だったので当初はレコード2枚組み、リック・ウェイクマンによる220ページのブックレットに数枚のスライド同梱、円型ジャケットという計画だったようですが、当時のオイルショックなどの影響で収録時間45分、LPレコード1枚、見開きジャケットに数ページの写真集という体裁になったとのこと。
聴き通してみると、アルバム全体の流れについて、確かに切って張った様な「ぎこちなさ」が残る。なるほど、LP2枚組の音源をLP1枚分の縮小したんや。アルバムを聴き通して、なんだか物足りなさが残るのは、このような背景があるからなんやね。なるほどなあ。
このライブ盤は紛れもなく「ロックとクラシックの融合」の成果ではあるが、基本的に、リック・ウェイクマンのキーボードがとことん「映える」というところが最大の聴きどころ。交響楽団、混声合唱団をバックに、リック・ウェイクマンのシンセが浮かび上がる。このライブ盤は、リック・ウェイクマンのキーボード、特にシンセサイザーをとことん愛でることが出来るライブ盤である。
1975年1月には来日公演も実現している。実は、僕はこの来日公演を大阪の厚生年金会館で観ている。懐かしい。ちなみに、この1975年の来日時のインタビューにおける質問と回答は、当時からリック・ウェイクマンのファンの間では有名ですよね。質問「オーケストラをバックに弾くというのは気持ちが良いでしょうね?」、ウェイクマンが答える「請求書が来るまではね」(笑)。
東日本大震災から11年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« 『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く | トップページ | アーサー王と円卓の騎士たち »
「プログレッシブ・ロック」カテゴリの記事
- Premiata Forneria Marconi『Chocolate Kings』(2024.08.03)
- Premiata Forneria Marconi『Photos of Ghosts』(2024.08.02)
- Premiata Forneria Marconi『Cook』(2024.08.01)
- Complete Keys to Ascension(2022.12.06)
- 70年代イエスの音「ABWH」(2022.12.06)
「Rick Wakeman」カテゴリの記事
- 『地底探検』発売40周年記念盤(2022.12.06)
- アーサー王と円卓の騎士たち(2022.12.06)
- 遠い昔、懐かしの『地底探検』(2022.03.13)
- 『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く(2021.08.11)
コメント