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2022年12月 6日 (火)

Yes『Fly From Here』を聴く

ジャズの合間の「耳休め」。1970年代ロック発祥のプログレッシブ・ロックのアルバムを聴く。僕にとっての「三大プログレ・バンド」と言えば、イエス、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン。こうやって並べてみると、どれもまだ活動中のバンドではないか。よって、新アルバムが出たら、ついつい手が出る。昔からの馴染みで「ポチッ」としてしまうんやなあ(笑)。

今から3年半ほど前になるが、イエスの10年ぶりとなる新アルバムが出た。2011年の夏、そのアルバムとは、Yes『Fly From Here』(写真左)。アルバム・ジャケットからして、完璧に「Yes」している。まったくもって素敵なロジャー・ディーンのイラストが味わい深い、イエスらしいジャケット。ジャケットのど真ん中、ちょっと上にあの「Yesのロゴ」。昔からのイエス者にとっては「たまらない」。

しかし、この新アルバム、イエスの往年のボーカリスト、ジョン・アンダーソン抜きのイエスなのだ。ちなみに核となるパーソネルは、Chris Squire (b,vo), Steve Howe (g,vo), Alan White (ds), Geoff Downes (key), Benoit David (vo)。イエスのオリジナル・メンバーからすると、メイン・ボーカルのジョン・アンダーソンとキーボードのリック・ウェイクマンがいない。

イエスと言えば、イエスのバンドの個性と特徴を決定付ける要素として、ジョン・アンダーソンのボーカルとリック・ウェイクマンのキーボードが挙げられるだけに、この二人のいない「イエス」って、どうなんの、って感じで、このアルバムを入手し、聴き始めた。

が、いやいや、それは杞憂でした。このアルバムに詰まっている音は、やっぱり「イエス」の音でした。盟友Trevor Hornがプロデュースです。ということは『Drama』の音やね、と思って収録曲のタイトルを見たら、トレバーとジェフでのアルバム『Drama』の頃のライブのみでの演奏曲「We Can Fly From Here」を発展させた組曲「Fly From Here」から始まる。
 

Fly_from_here_1

 
ポップなプログレッシブ・ロックが展開される。耳に優しく、聴き易いプログレ。変に転調したり、変則拍子を繰り出したりしない。安心、安定な展開が心落ち着くプログレッシブ・ロック。良い感じです。今の時代にピッタリの雰囲気。いや~ビックリしました。嬉しい意外性とでも言ったら良いのか、もっと、昔のクラシック・イエスの音を踏襲するかと思っていたのですが、良い意味で期待を裏切られました。

ベノワ・ディヴィッドのボーカルも良好。ジョン・アンダーソンそっくりのボーカルなんて揶揄されますが、確かに声質は似ています。が、アンダーソンそっくりではありません。雰囲気が合っている、という感じですかね。でも、声質と雰囲気が合っているので、ベノワ・ディヴィッドの歌声をもってしても、このアルバムの音世界は紛れもなく「イエスの音世界」です。

キー・ボードがジェフ・ダウンズなので、さすがに「およよ」と思う部分も無いことは無いのですが、気になるほどでは無いです。恐らく、ハウとスクワイアのバック・ボーカルが「イエス」なんで、キーボードのダウンズならでは手癖が気にならないのでしょう。

しかし、素晴らしいですね。1969年にデビューしたプログレ・バンド「イエス」。この『Fly From Here』がリリースされた2011年、まだまだ「イエス」は進化している。ジョン・アンダーソンとクリス・スクワイアあっての「イエス」なんだが、ジョン・アンダーソン抜きでも成立する「柔軟性のある進化」を聴いたような気がする。

ポップにドラマティックに仕上がったこの『Fly From Here』を聴くにつけ、プロデューサーのトレーバー・ホーンの腕前は流石やなあ、と思いっきり感心したりする。往年のイエス者の方々にも、最近の若きプログレ者の方々にも、十分にアピールし、十分に聴き応えを与えてくれる、久々のプログレの佳作です。まだまだ「イエス」は眠らない。
 
 

東日本大震災から11年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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