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2022年12月 6日 (火)

70年代イエスの音「ABWH」

日曜日のブログは「ジャズの合間の耳休め」。今日はプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)の話題を。ロックというジャンルにとらわれることなく、他ジャンルの影響をも反映した、前衛的あるいは先進的(プログレッシブ)かつ実験的なロックの総称。1970年代に一世を風靡し、現代においてもスタイルの拡散・細分化が進んでいる。

ジャズ者になる前、高校生時代の前半は完璧な「プログレ小僧」だった私こと松和のマスター。ジャズ者になってからも、インスト中心のプログレは「ジャズの合間の耳休め」に最適。21世紀になってからは、プログレ好盤の大人買いを進め、まずまずのコレクションになった。

今回、気になっているブツがあって、どうしようかな、と悩んでいたのだが、遂に入手するに至り、このブツの入手が切っ掛けとなって、伝説のプログレバンド「イエス」のアルバムを聴き直すことになってしまっている。まあ、意外と「イエス」がお気に入りなので、懐かしみながら楽しみながらの聴き直しである。

そんな聴き直しの中、かなり久し振りに聴いて感心したアルバムがある。『Anderson Bruford Wakeman Howe』(写真)。4人の主要メンバーのセカンド・ネームを羅列しただけのバンド名をそのままアルバム名にした、やっつけ感満載のプログレ盤である。1989年のリリース。邦題は『閃光』。邦題の真に意味するところは未だに不明である(笑)。

この羅列された4人の主要メンバーのセカンド・ネームを見れば「ああ、これはイエスのメンバーが集まって作ったアルバムなんや」と直ぐに判る。Wikipediaによると以下の様な結成経緯を経たバンドだということが判る。

「1980年代、イエス再結成後の活動に於いて、新メンバー、トレヴァー・ラビン(g, vo, key)のイニシアティヴによってコマーシャル化していったことに幻滅したジョン・アンダーソン(vo)が、1988年にイエスを脱退し、『こわれもの』や『危機』を発表した頃のような、1970年代にあった創造性を蘇らせようと当時のメンツを呼び寄せて結成したバンドである。略称は「ABWH」。
 

Anderson_bruford_wakeman_howe_1

 
確かにその通りで、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』に詰まっている音世界は、1970年代のイエスの音世界を踏襲している。が、1989年の録音である。録音環境はデジタルに移行しているので、アルバムに収録されている音は明らかにデジタルっぽい。音の雰囲気は明らかに「70年代イエス」なので、録音の音の雰囲気にも凝って欲しかったなあ、というのが本音。

主要メンバー4人、「70年代イエス」は5人。あれ、誰がいないのか、と見渡して見ると、ベースのクリス・スクワイアがいません。ということで、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』を聴いて、これが「70年代イエス」の音だよ、と言われて、何かが足らないなあ、と思う貴方は完璧な「イエス者」です。確かに、あの太いブンブン・エレベの音が無いので、これが実に物足りない(笑)。

加えて、7曲目の「Teakbois」だけは、ちょっとなあ、という雰囲気な楽曲で惜しい。「ワールド・ミュージック」へのアプローチと捉えれば聞こえが良いのですが、この楽曲の冒頭のカリブ音楽のリズムやサウンド、さらに3分前後からのどことなく、60年代モータウン風のコーラス、5分前後のラテン音楽風のコーラスなど、「70年代イエス」の音世界とは全く無縁というか、このアルバムで唯一の「大いなる違和感」を感じるトラックです。

7曲目の「Teakbois」を除けば、「70年代イエス」の再現と言っても良いとは思いますが、この楽曲だけはどうにも、いつ聴いても「ひき」ます(笑)。それでも、この『Anderson Bruford Wakeman Howe』は、「70年代イエス」の音世界の再現としては、まずまずの出来でしょう。往年の「イエス者」の方々も概ね良好な評価に落ちついています。

アルバム・ジャケットもロジャー・ディーンのイラストが復活していて、往年のイエス者からすれば嬉しい限りのアルバムです。でも、この「Anderson Bruford Wakeman Howe」というバンドもこの一枚で終わり。本当に、お家騒動の好きなイエスのメンバー達ではあります。
 
 

東日本大震災から11年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
Never_giveup_4
 
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