Premiata Forneria Marconi『Chocolate Kings』
プログレッシブ・ロックのアルバムの棚卸しをしていた時、イタリアン・プログレの雄・PFM(Premiata Forneria Marconiの略称)のアルバムに出くわした。今を去ること35年ほど前、高校時代にずいぶんお世話になったプログレバンドのPFM。そのPFMのアルバムの中に久しく顔を見ていないアルバムがあった。
Premiata Forneria Marconi『Chocolate Kings』(写真)。1975年の作品。ちなみにパーソネルは、Bernardo Lanzetti (vo), Franco Mussida (g, voice), Flavio Premoli (key, vo), Mauro Pagani (fl, vln, vo), Patrick Djivas (b, vo), Franz Di Cioccio (ds, vo)。
ライヴ盤『Cook - Live In USA』やコンピレーション盤『Award-Winning Marconi Bakery』等を経て、オリジナルのスタジオ・アルバムとして6作目となる僕にとって、この『Chocolate Kings』は、あまり印象の良く無いアルバムになる。まあ、今となっては懐かしい思い出なんだけどね。
このアルバムが発売された頃は、僕はいっぱしの「プログレ小僧」となっていて、このPFMの新作を期待して待っていた。そして、FMの番組でオンエアされるのを、珍しくステレオの前に座って、ジッと聴き耳を立てていたのを覚えている。が、聴き終えて、ガッカリした。今から振り返れば、懐かしい思い出である。
この新作に向けて、英語によるヴォーカルを強化する為に、ACQUA FRAGILE のベルナルド・ランゼッティを新メンバーに迎えた。これが失敗の元だろう。声の質が如何にもロックな感じで繊細さの微塵もない。ただ大声を出して、平坦に歌っている感じで、すごく平凡な感じがする。
力技的な演奏力を前面に出した豪快なイメージのアルバムであり、今までの「売り」だった、クラシカルで、繊細かつ幽玄な世界は全く消え失せていた。
どうして、こんなイメージ・チェンジを図ったのだろう。米国進出を焦ったのか。でも、このアルバムは「痛烈に米国を皮肉った」アルバムなんだよな。この歌詞の内容で、米国で売れるはずがない。
この『Chocolate Kings』は、PFMの本来の良さが失われたアルバムではある。1975年、今から思えば、この時期がプログレ衰退の始まった年だった。そして、PFMも自らの良さを捨て去って、凡庸なバンドへと衰退した。この『Chocolate Kings』を聴いて、失望して以来、PFMは聴かなくなった。そんな象徴的なアルバムである。
でも、PFMは、僕に英国や米国以外の国にも優れたロック・バンドがいて、それらのバンドは、当然、自分たちの国の過去からの音楽遺産を踏襲して、それぞれが独自の音世界を形成している、ということを教えてくれた。
今聴いても、デビュー当時から1975年までのPFMには素晴らしいものがある。こんなバンドを、多感な高校時代、リアルタイムに体験できたことは幸せなことだったと思っている。
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