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Warne Marsh『Warne Marsh(Atlantic盤)』

ジャズの歴史に名前を残してはいるが、人気の高いミュージシャンでは無い。はたまた、歴史を変えるような名盤でも無い。でも、その個性を人知れずひっそりと愛でることの出来る、所謂「隠れ名盤」というものは沢山ある。

今回の「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの12回目。今回は、Warne Marsh(ウォーン・マーシュ)の『Warne Marsh(Atlantic盤)』(写真左)である。1957年と58年の録音に分かれる。

1曲目「Too Close for Comfort」と3曲目「It's Allright with Me」が、1957年12月の録音。パーソネルは、Warne Marsh (ts), Ronnie Ball (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。

2曲目「Yardbird Suite」、4曲目より「My Melancholy Baby」〜「Just Squeeze Me」〜「Excerpt」が、1958年1月の録音。パーソネルが、Warne Marsh (ts), Paul Chambers (b), Paul Motian (ds)。

マイルス楽団から、Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)の参入が目を引く。それから、ビル・エバンス・トリオで名を馳せたPaul Motian (ds)もだ。リーダーのマーシュは西海岸のテナーマン。Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)は東海岸のミュージシャンだけに、この取り合わせは面白い。
 

Warne_marsh

 
ボワン、フワフワとした心温まるトーンが心地良いマーシュのテナー。決して刺激的でない、丸みのあるインプロビゼーション。クール派と言われるが、芯のしっかりした、男気のある節回しを聴かせる。激しい熱さでは無いが、穏やかなホットさを感じるスタイリッシュなブロウ。

そんなマーシュを、アルバムの演奏の中で、一貫してプッシュしているのが、ベースのチェンバース。ブンブンと弦を震わせながら、マーシュのテナーをフォローする。

最初は「やけにベースのソロが多いなあ」と感じる。ブンブンと特徴的なベース音を聴き続けていると「これはチェンバースか」と思い当たる。そして、聴き進めると「チェンバースのベースは上手い」と感心する。マーシュのバックにしっかりと控え、マーシュのテナーを引き立てる。

特に、Warne Marsh (ts), Paul Chambers (b), Paul Motian (ds)のピアノレス・トリオでの、1958年録音の4曲の演奏が心地良い。ドラムレスのデュオでも良かったのでは、と思えるほどの絶妙な「テナーとベース」の組合せ。チェンバースの絶妙なサポートを得て、いつになくマーシュがホットにブロウするところが実にジャジー。

選曲も良し。マーシュのテナーを愛でるに最高の一枚。良いアルバムです。こんなアルバムが、ジャズ喫茶の昼下がりに流れていたら・・・。そしてそこに、熱くて美味いコーヒーが有れば・・・。これって「至福のひととき」ではないでしょうか。
 
 

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