ピアノ

Bobby Jaspar『Bobby Jaspar, George Wallington & Idrees Sulieman』

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ・第25回目である。今日は『Bobby Jaspar, George Wallington & Idrees Sulieman』(写真左)。Riverside RLP240、リバーサイド・レーベルの隠れ名盤。
 
邦題は「ボビー・ジャスパー・ウィズ・ジョージ・ウォーリントン」。なんだか、タイトルだけ見れば、客演のバップ・ピアニスト「ジョージ・ウォーリントン」に重きを置いているような扱いである。
 
原題を見れば、リズムセクションの二人が無視されているようで、もうちょっと、内容に見合ったタイトルをつけることが出来なかったのか、と悔やまれる。そ れほどに、アルバムの中身を聴けば、そんな扱いや印象はとんでもない。リーダーのボビー・ジャスパーのテナー&フルートが堪能できる、優れたハードバップ盤である。
 
ベルギー出身のテナー奏者 Bobby Jaspar(ボビー・ジャズパー)は、パリにおける活動がメインだったが、米国のジャズシーンでも活躍したので、そこそこ知名度の高いミュージシャン。1926年生まれで1963年に亡くなっているので、37歳の若さで夭折(ようせつ)したことになる。それでも、要所要所に良いアルバム、良い演奏を残してくれているのが嬉しい。
 
最も有名なのは、J.J. Johnson の『Dial J.J.5』とWynton Kellyの『Kelly Blue』への参加でしょう。ジャスパーは基本的にはテナー・サックス奏者ですが、「Kelly Blue」でのフルートの演奏も印象的です。僕は、ジャズ者超初心者の頃、この「Kelly Blue」でのジャスパーのフルートに触れて、ジャズってフルートもありなんやなあ、と妙に感心した思い出があります。
 
このアルバムはハードバップ時代ど真ん中、1957年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Jaspar(ts,fl), Idrees Sulieman(tp), George Wallington(p), Wilbur Little(b), Elvin Jones(ds)。
 
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ジャスパーのテナーとフルートはオーソドックスなテナーで、ハードバップ時代特有のソフトで大らかなトーン、語り口の判り易い唄い口で、心地良くリラックスしたブロウを聴かせてくれる。逆に、リズムセクションを担う、ベースのリトルとドラムのエルヴィンは意外とハードタッチで、ビシビシとビートを聴かせた 俊敏なプレイでフロントを盛り立てる。
  
この対比が実に上手く決まっていて、そこに、バップ・ピアニストのウォーリントンが、全体の音のバランスを取るように、全体の音のトーンを決めるように、実に優美なピアノを聴かせくれる。所謂「古き良きジャズ」と呼んでピッタリの内容である。
 
3曲目の有名スタンダード曲「All Of You」なぞ、絶品である。さすがに、この時代の第一線の一流ジャズ・ミュージシャンは、有名スタンダードをやらせると、とにかく上手い。ジャスパーのテナーは、少し掠れた太い音色で、この有名スタンダード曲のテーマを大らかに歌い上げていく。バックのリズム・セクションは、ガッチリとフロントのジャス パーをサポートし、演奏の音のベースをガッチリと支える。

 
5曲目のバラード曲「Before Dawn」のジャスパーのテナーも絶品。オーソドックスなスタイルを踏襲しつつ、少し乾いた音色がとても良い感じである。バラード演奏にしては、ちょっと トランペットが賑やかなのが玉に瑕ではあるが、ジャズパーのバラード演奏は申し分無い。この「Before Dawn」ジャズパーのバラード演奏が堪能できる貴重なトラックである。
 
良いアルバムです。ジャズの歴史を彩る、ジャズ者初心者向け入門本に挙がる様な名盤ではありませんが、ハードバップな雰囲気満載で、聴き始めると一気に聴き込んでしまいます。時々引っ張り出しては聴きたくなる、飽きの来ない、スルメの様な、噛めば噛むほど味が出る、聴けば聴くほど味が出る、そんなハードバップ時代の「隠れ名盤」です。 
 
 
 

Eric Reed & Cyrus Chestnut『Plenty Swing, Plenty Soul』

ジャズのアルバムには「いろいろ」ある。最高にアーティスティックなアルバムもある。テンション高い真剣勝負なアルバムもある。息が詰まりそうなハイテクなアルバムもある。しかし、ジャズ本によく載る、絵に描いた様な「名盤」ばかり聴いていると、ちょっと疲れる。
  
ただ聴いているだけで楽しい気持ちになったり、ただ聴いているだけで幸せな気分になったり、難しいことを考えず、ただ演奏される「音」を聴いているだけで、なんだか心が満たされる。なにかしながら、ただ「ながら」で聴いていても、邪魔にならず、スッと心に入ってくる。そんなアルバムと付き合うのも、長くジャズと付き合っていく上で、非常に大切な「耳のパートナー」である。
 
この、Eric Reed & Cyrus Chestnutの『Plenty Swing, Plenty Soul』(写真左)は、僕のそんな大切な「耳のパートナー」の一枚。エリック・リードとサイラス・チェスナット(写真右)の2人のピアニストの連弾ライブである。どちらも、現在、気鋭の中堅、正統派のジャズ・ピアニスト。連弾とは言っても、しっかりとリズム・セクションも付いている。Dezron Douglas(b), Willie Jones III(ds)である。2009年3月の録音。
  
NYCきっての高級ジャズ・クラブ「ジャズ・アット・リンカーン・センター ディジーズ・クラブ」でのライブ録音である。この「ライブ」というのが楽しい。演奏の途中にお客の拍手が入るが、その拍手の音が「楽しんでいる」音をして いるのだ。こういう時のジャズのライブ盤は絶対に聴いていて「楽しい」。そして、幸せな気持ちになり、心が満たされる。
 
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恐らく、パラパラコロコロと転がるようにパッセージを展開する方がチェスナット、ブロックコードを駆使しつつ、ちょっと落ち着いたパッセージを聴かせる方がリードだと思うが如何だろうか。とにかく、ドライブ感溢れる、爽快感抜群のピアノが連弾で聴くことが出来る。バラードを弾かせても、そのふくよかな歌心溢れる優雅な雰囲気は二人のピアノの共通の印象。当然、それぞれのソロもあるが、これまた甲乙付け難し。
 
「I'll Remember April 」「All the Things You Are」「Two Bass Hit」 などのスタンダードは、連弾の特徴を活かして、ピアノの旋律を奏でる音が分厚くて判り易く、音の重なりが美しい、一台のピアノだけでは聴くことが出来ない、連弾ならではのダイナミズムが実に印象的。
 
即興的に作られたと言われるアルバムタイトル曲のラストの7曲目「Plenty Swing, Plenty Soul」などは、「ど」がつくほどのゴスペル・タッチで、ピアノの響きも力強く、ファンキーで美しく、バックのリズム・セクションもバリバリに粘っていて、ライブならではのダイナミズムを大いに感じさせてくれる。これ、なかなかのもんでっせ〜。
 
そう、このエリック・リードとサイラス・チェスナットの連弾ピアノ・トリオ(と言っていいのかしら)は、連弾ならではの「ダイナミズム」が最大の「売り」。二人とも、現時点における、気鋭の中堅、正統派のジャズ・ピアニストで、テクニック・歌心・スタイル、どれをとっても一流で、安心してピアノの演奏に身を任せることができるのも、このアルバムの良さ。
 
とにかく、ただ聴いていて楽しく、幸せな気分にさせてくれる好ライブ盤です。特に、ジャズ・ピアノの好きなジャズ者の方々にお勧めです。「ながら」で聴いていても、邪魔にならず、スッと心に入ってくる。我が、バーチャル音楽喫茶『松和』では、この半年ほど、気軽に聴ける好アルバムとして、結構、ヘビーローテーションな一枚となっています。
 
 
 

The Great Jazz Trio『Love For Sale』

The Great Jazz Trio と言えば、ハンク・ジョーンズ (p)、ロン・カーター (b)、トニー・ウイリアムス (ds) のベテランピアニスト+中堅ジャズメン2人によるトリオ、となる。代表作としては、『At the Village Vanguard』3部作。

僕は、トニー・ウイリアムスの「ど派手」なドラミングについては、そんなに問題とは思っていない。ハードバップなドラミングを「ど派手」な方向に最大限に振ったら、トニー・ウィリアムスの様なドラミングになるだろう、と思う。

しかし、アタッチメントを付けて電気ベースの様な音に増幅された、ロンの「ドローン、ベローン」と間延びして、締まりの無いベース音がどうしても好きになれない。しかも、ピッチが合っていない。せめて、楽器のチューニングはちゃんとして欲しい。気持ち悪くて仕方が無い(1990年代以降は徐々に改 善されていくのだが・・・)。

よって、ハンク・ジョーンズのベテラン的な味のあるバップ・ピアノとトニー・ウイリアムスの「ど派手」なハードバップ・ドラミングは良いとして、ベースのロン・カーターのベースを何とかしてくれ、と思ったことが何度あったことか(笑)。が、これが「ある」から面白い。

1976年5月録音、The Great Jazz Trio単独名義のファースト・アルバムは『Love For Sale』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Buster Williams (b), Tony Williams (ds)。なんと、ベースは、バスター・ウィリアムスなんですね〜。渡辺貞夫との共演盤でのThe Great Jazz Trioのベーシストは、ロン・カーターなんですけどね〜。つまり、ベーシストは固まっていなかったってこと。

このバスター・ウィリアムスのベースが実に良いんですよ。ブンブンと引き締まった重低音を、しっかりとピッチの合ったベースラインを、自然な生ベースの音を、実にアコースティックに聴かせてくれる。
 

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ハンク・ジョーンズのベテラン的な味のあるバップ・ピアノとトニー・ウイリアムスの「ど派手」なハードバップ・ドラミング、そして、バスター・ウィリアムスの「しっかりとピッチの合った」ブンブンと引き締まったベース。これぞ、ピアノ・トリオって感じ。

僕は、このバスター・ウィリアムスがベースの The Great Jazz Trio を愛して止まない。けれど、この1976年5月録音の『Love For Sale』の一枚しか、このトリオでの The Great Jazz Trio の録音が無い。これが実に残念でならない。

ベースがバスター・ウィリアムスで、ビシッと決まっているお陰で、トニー・ウィリアムスのドラミングの素晴らしさが浮き出てくる。彼のドラミングは 単に「ど派手」なだけではない。伝統的なハードバップ的なドラミングを、当時最新のドラミング・テクニックで再構築しており、実に斬新的な響きのするハー ドバップ・ドラミングが実に新しい。確かに「すべっている」部分もあるが、ここでのトニーのドラミングは「温故知新」。伝統的なハードバップ・ドラミング を最新の語法で、従来の4ビートのセオリーを打ち破って、1980年代以降のハードバップ復古の時代に続く、新しいハードバップ・ドラミングを提示してい るところが凄い。

このアルバムでは有名なスタンダード・ナンバーを中心に演奏していますが、これがまた新しい響きを宿していて、ハンク・ジョーンズ侮り難しである。従来と異なったアレンジを採用したり、トニーとウィリアムスのバッキングを前面に押し出して、従来のハードバップなアプローチを覆してみたり、従来のスタンダード解釈に囚われない、そこはかとなく斬新なアプローチが、今の耳にも心地良く響く。とにかく、従来のハードバップに囚われず、逆に、トニーとウィリ アムスの協力を得て、新しいハードバップな響きを獲得しているところが実に「ニクイ」。

良いアルバムです。良いピアノ・トリオです。The Great Jazz Trioの諸作の中では、あまり話題に挙がらないアルバムですが、このアルバム、結構、イケてると思います。バーチャル音楽喫茶『松和』では、結構、ちょくちょくかかる、松和のマスターお気に入りの一枚です。
 
 
 

Tommy Flanagan『The Master Trio/Blues In The Closet』

CDの時代になって随分経つが、LP時代よりCDの方が、収録時間が圧倒的に長くなり(約45分→約70分)、LP時代のアルバムを2枚ほどカップ リングして、パッケージを変えて再リリースしたり、LP2枚組の収録曲から何曲かを落として、むりやりCD1枚に収録したりと、なにかと紛らわしいケースに時々出くわす。

昨年、米国でリリースされた Tommy Franagan の『THE TRIO』(写真右)もそうで、最初は、Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Tony Willams (ds) の未発表音源かと思った。が、収録曲を眺めていて「ん〜っ」と思い始め、調べてみたら、LP時代の『The Master Trio featuring Tommy Flanagan,Ron Carter,Tony Williams』と『The Master Trio/Blues In The Closet』のカップリングと判明。どちらも、1983年6月16~17日の録音なので、まあ、カップリングしても、問題無いと言えば問題無いけ ど・・・。

でも、やはり、LP時代に2つのアルバムに分かれてリリースされていたのなら、やはりCD時代になっても、やはり分けてリリースすべきだろう。確か、この2枚のアルバムはLP時代と同様、2枚のアルバムに分けてリリースされていたはず。昨年、なぜか米国で1枚のCDにカップリグされ、新しいジャ ケット・デザインでリリースされた。紛らわしいことこの上無し。

2枚に分かれていたアルバムの内、実は『The Master Trio featuring Tommy Flanagan,Ron Carter,Tony Williams』はCD音源で既に所有してたんだよな〜。で、今回、あまり確かめもせずに、 Tommy Flanaganの『THE TRIO』を購入してしまったので、前半の7曲が「かぶって」しまったやないか〜(笑)。ちなみに、前半7曲の『The Master Trio featuring Tommy Flanagan,Ron Carter,Tony Williams』については、2008年8月2日のブログ(左をクリック)で、ご紹介しているので、こちらをご参照されたい。

さて、僕がLP時代より愛して止まないのが、Tommy Flanagan の『THE TRIO』の後半7曲で構成される、1983年作品『The Master Trio/Blues In The Closet』(写真左)である。The Great Jazz Trioの路線を狙った、日本企画の二番煎じ的なトリオの作品なんですが、さすがに、Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Tony Willams (ds)という、名うての名手揃い。これがなかなか渋い内容のピアノ・トリオです。
 

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ちなみに収録曲は以下の通り。

1. Good Bait
2. Afternoon In Paris
3. Giant Steps
4. Blues In The Closet
5. Sister Sheryl
6. My Ship
7. Moose The Mooche

1枚目の『The Master Trio featuring Tommy Flanagan,Ron Carter,Tony Williams』は、ちょっと気恥ずかしくなるような大スタンダード大会だったので、「ちょっとなあ〜」という感じで、ちょっと「ひき」ましたが、この 2枚目の『The Master Trio/Blues In The Closet』は、ちょいと捻りの効いた選曲が「小粋」です。

このアルバムでのフラナガンは「主役」なので、「伴奏の名手」は封印し、あくまで、メイン奏者として、ハイテクニックで端正な「ハードバップ・ピアノ」を聴かせてくれます。特に冒頭の「Good Bait」は、旋律の音の流れがちょっと捻くれていて、ウッカリするとミスタッチ連発、それが嫌で慎重に弾くと、ノリがてきめん悪くなるという厄介な曲なんですが、フラナガンは、いともたやすく端正に弾き上げていきます。

また、ここでのロンのベースは、まずまずベースのチューニングがなされて、ハイテクニックを駆使して弾き進めるロンのベースの音が気持ち悪くありません(笑)。1970年代のロンのベースは、チューニングが甘く、音をアタッチメントで増幅していたのか「ドロ〜ン、ボヨ〜ン」としたブヨブヨしたベース音で、とにかく気持ち悪い演奏が多かった。さすがはベースの達人の一人、ロン・カーター。ベースのチューニングが合えば、なかなかのベースになりますね〜。ロン独特のベースの個性がやっと聴き取れるようになった。

トニーは、1970年代、The Great Jazz Trioでは、全面にしゃしゃり出ることが多く、ドラミングもバスドラを多用した「ど派手」なもので、演奏する曲によっては、ちょっと「眉をしかめる」出しゃばり様でしたが、このアルバムでは、しっかりとフラナガンのバックについて、極上のビートを供給し、堅実に「タイムキーパー」の任を果たしています。トニーも1980年代に入って、グッと大人になったなあ、と感じられる、伴奏に徹したドラミングには好感が持てます。

良いピアノ・トリオです。この『The Master Trio/Blues In The Closet』については、外は「うだる暑さ」の中、涼しいジャズ喫茶のノンビリした夏の午後に流すイメージですね。肩肘張ること無く、心地良く聴き流しの出来る、ピアノ・トリオ入門盤としても適した、意外と玄人好みのアルバムだと思います。 
 
 
 

Bobby Timmons『Born To Be Blue!』

ジャズ・ピアニストで、「ファンキー」なジャズ・ピアニストと問われれば、私としては、まず、ホレス・シルバーが浮かび、そして、次にボビー・ティモンズ。

ボビー・ティモンズについては、今年の5月6日のブログ(左をクリック)「ピアノ・トリオの代表的名盤・12」と題して『This Here Is Bobby Timmons』をご紹介した。ボビー・ティモンズのバイオグラフィーについては、この記事をご覧頂きたい。

今回は、そんなファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの私の愛聴盤の一枚をご紹介したい。タイトルは『Born To Be Blue!』(写真左)。1963年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Timmons (p) Ron Carter (b) Connie Kay (ds)。なかなか渋い人選である。

このアルバムは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャースで、コテコテのファンキー・ピアノを弾きまくっていたボビー・ティモンズが、そのファンキーなイメージをグッと押さえて、アーティスティックで大人な雰囲気を全面に押し出した、実に趣味の良いピアノ・トリオ盤です。ティモンズ本人からして、自ら生涯最高傑作と評したピアノ・トリオ盤である。

ファンキーなイメージを押さえることにより、気品に満ちたソウルフルな味わい全面に浮き出てきて、ティモンズのピアノタッチが実に美しく響く。そして、その美しいピアノ・タッチの底にジンワリ漂う、ティモンズの「地」であるファンキーな雰囲気。実に趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノと表現すれば良いでしょうか。
 

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若き精鋭ベーシスト、ロン・カーターと、職人的バップドラマー、コニー・ケイとのマッチングが大正解。気品はMJQのメンバーであったコニー・ケイ のドラミングに因るところが大きく、趣味の良さは、モード的な雰囲気を醸しだしながらも、しっかりとバップ的なベースのビートを供給するロン・カーターに 因るところが大きい。

1963年辺りといえば、ジャズは、ポップな面では、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズが主流となり、アーティスティックな面ではモード・ジャズが主流となっていた。そして、ボサノバが上陸し、ボサノバ・ジャズが当時の流行の最先端。そんな時代の中で、このティモンズの実に趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノは、実にイージーリスニング系であり、実に趣味の良いポップミュージックである。

とにかく、収録されたどの演奏も、ハード・バップな芯のある純ジャズ的な演奏であるが、難しい節回しやジャズ独特の不協和音的なインプロビゼーションは排除され、とにかく、全編、聴き易く、ファンキー&ソウルフルな明るい雰囲気の演奏ばかりで、聴いていてとても楽しく、リラックスして聴き通せる。別の仕事をしながらのBGMに良し、酒を傾けながらの粋なBGMにも良し。

さすがに、ティモンズ本人が、自ら生涯最高傑作と評したピアノ・トリオ盤だけある。もともとジャズは大衆音楽。このアルバムの様な、全編、聴き易く、ファンキー&ソウルフルな明るい雰囲気の演奏がジャズの真骨頂のひとつであることは間違い無い。そして、俗っぽさを徐々に排除しつつ、コテコ テのファンキー・ピアノを趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノに昇華させていった、ティモンズの研鑽に敬意を表したい。

最後に、このアルバム、ジャケットが良いです。実に雰囲気のあるジャケット写真。もうもうと立ち上る煙草の煙と深い濃紺を基調にまとめられたジャ ケットは「ジャズ」以外の何者でもない。このジャケットについては、LPサイズのジャケットを手に入れたい。そんな気にさせる実に秀逸なアルバム・ジャ ケットです。  
 
  
 

Jack Wilson『The Jack Wilson Quartet Featuring Roy Ayers』

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ、今日は第13回目である。ジャズ喫茶で流したいアルバムは、なにもジャズの歴史の中での有名盤ばかりではない。また、ジャズファンの人気の定盤ばかりではない。

ジャズの楽しみを十分に感じることが出来る、知る人ぞ知る、隠れ名盤、隠れ佳作が、この「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの対象となり得るアルバムになる。この「ジャズ喫茶で流したい」の対象となるアルバムのチョイスが、その「ジャズ喫茶」の見識であり、格式になる。

今日の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」で流れているのは、『The Jack Wilson Quartet Featuring Roy Ayers』(写真左)である。ピアニスト、ジャック・ウィルソン(Jack Wilson)の処女作。ロイ・エアーズ (Roy Ayers) のバイブラフォンが加わったカルテットの編成。
 
改めて、パーソネルは、Roy Ayers (vib), Jack Wilson (p), Al Mckibbon (b), Nick Martins (ds)。1963年、Atlanticレーベルからのリリースです。

1曲目はボサノヴァの「コルコバード」。この演奏を聴くと、ピアノのジャック・ウイルソンの特徴が良く判る。ジャズとしての黒さは希薄ではあるが、演奏のベースに、そこはかとなくファンキーさが漂い、ジャジーさよりもポップさが上回る、ジャズというジャンルの中では「中性的な音」。

黒っぽくジャジーでもない、かといって、ファンキーコテコテでも無い。その両者の要素を演奏の底にそこはかとなく漂わせながら、表面上は、ポップで シンプルな、聴き易く、それでいて、全体を覆う雰囲気は紛れもない純ジャズという、ジャック・ウイルソン独特の音世界を楽しませてくれる。
 

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そのジャック・ウイルソン独特の音世界に、これまた貢献しているのが、ロイ・エアーズ のヴァイヴ。ロイ・エアーズはフュージョンというか、ジャズとファンクを融合させた音楽での成果の方で、アシッドジャズやヒップホップに関わる人々に評価されている。決して、純ジャズ側のミュージシャンでは無い。

でも、このアルバムでのロイ・エアーズのヴァイヴは、しっかりと純ジャズしている。ロイ・エアーズのヴァイヴの特徴は、透明なヴァイブの音色。ファンキーさは希薄、ジャジーな雰囲気は漂わせてはいるが、決して米国的では無い。どちらかと言えば欧州的。透明感と爽快感、そしてアーシーな雰囲気を底に漂わせながら、テクニックは正統派。ブルージーに攻めてきても、しっかりと透明感、爽快感が全面に出るところが面白い。

2曲目以降は、全て、ジャック・ウイルソンのオリジナル曲が並ぶ。どの曲を聴いてみても、ジャック・ウイルソンの非凡な作曲センスにビックリする。いずれも良い曲なんですよね。実にわかりやすいブルース・ナンバーが印象的。

地味で全面に出てくることはあまりないが、アル・マッキボン (AL McKIBBON) のベースも心地良い。ニック・マーティンズ(NICK MARTINS)のドラミングは堅実。とにかく、何度聴いても飽きの来ない、上質で品の良い、透明感と疾走感をベースに、ライト感覚溢れる、聴き易いポップなジャズ演奏を聴くことが出来ます。

良いアルバムです。ジャック・ウイルソンって、BlueNoteレーベルの人かと思っていたら、デビューはAtlanticレーベルの人だったんですね〜。でも、この人のジャズ・ピアノの音を聴いていると、Atlanticレーベルからのデビューって判るような気がします。このアルバムのリリースさ れた1963年当時、このジャック・ウイルソンのジャズ・ピアノとオリジナルの楽曲は、ポップさという面で、なかなか新しい感覚のものではなかったか、と思います。 
 
 
 

Cedar Walton『Cedar!』

Cedar Walton(シダー・ウォルトン) というピアニストのキャリアはかなり長い。Art Blakey & Jazz Messengers にも参加していたんだが、あまり大衆受けはせず、どちらかと言えば「玄人好み」。
 
以前、村上春樹さんが、著書「意味がなければスイングはない」で、シダー・ウォルトンをとりあげているのを読んで、ちょっとビックリしたのを覚えている。

1934年1月生まれ。1955年頃にニューヨークに進出。1960年代の初め、ピアニスト、アレンジャーとして、Art Blakey & Jazz Messengersに籍を置き、Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Reggie Workman (b) と活動をともにした。1964年、Jazz Messengersを脱退後はフリーで様々なミュージシャンとアルバムを残している。

どちらかといえば派手さは無く、じっくり聴かせるピアニストである。ピアノの音の芯が崩れない、というか、音の強弱、音の緩急によって音が崩れること無く、クッキリしているのが特徴かな。テクニックは優秀。作曲家としての才も大いにある。

そんななぜかマイナーな位置に甘んじているシダー・ウォルトンの「お気に入り」盤の一枚が、1967年リリースの『Cedar!』(写真左)。パー ソネルは、Junior Cook (ts), Kenny Dorham (tp), Billy Higgins (ds), Leroy Vinnegar (b), Cedar Walton (p)。
 

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フロントのジュニア・クックとケニー・ドーハムの参加が目を惹くが、どちらもあまりパッとしないんですよね、これが。で、何故このアルバムが「お気に入り」盤かというと、当然、シダー・ウォルトンのピアノが素晴らしいからです(笑)。

収録曲は「Turquoise Twice」「Twilight Waltz」「Short Stuff」「Head and Shoulders」の4曲は、シダー・ウォルトンのオリジナル。「My ship」「Come Sunday」「Take The A Train」(CD追加曲)の3曲はスタンダード。ウォルトンのオリジナル曲は、モーダルな雰囲気が魅力的で、なかなか配慮が行き渡っており、作曲家としての魅力も満喫できます。

なかでも、3曲目の「My Ship」は、フロント抜きのピアノ・トリオ編成での演奏で、ウォルトンのピアノが、心ゆくまで堪能できます。続く4曲目の「Short Stuff」は、軽妙でクッキリとしたタッチが聴き所の楽しい曲で、聴き応え十分です。この2曲がハイライトでしょうか。
 
決して、フロントの2人(クックとドーハム)に期待して、聴いてはいけないアルバムではあります。でも、そんなに酷くないんですけどね〜。絶好調の時の2人の演奏を知っているだけに「何、はっきりせんと、ぼんやり吹いてるの?」って感じなんですね。でも、その2人のフロントを減じて余りある、Billy Higgins (ds), Leroy Vinnegar (b), Cedar Walton (p) の3人。振り返れば、このトリオ編成だけで録音すれば良かったのに、とも思いますね。

なかなか話題に上がらないアルバムですが、シダー・ウォルトンを愛でるには絶好のアルバムだと思います。ジャズ喫茶で流したいアルバムでもあります。はっきりせんと、ぼんやり吹いているフロントの2人に幻惑されて、誰のアルバムなのか、いつの時代のアルバムなのか良く判らなくなる、ジャズ者にとっては、面倒なアルバムです(笑)。
      
     
    
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George Wallington『Complete Live at the Caf Bohemia』

ジャズはライブに限る。大衆音楽の範疇ではあるが演奏テクニックに優れ、コード進行は複雑、そして、再現性の無い、一発瞬間芸なところが魅力のジャズ。そんなジャズの真価を感じるにはやはりライブである。

70年代ロックの世界ではライブは鬼門だった。スタジオ盤はスタジオで編集加工されているので、出来が良い。しかし、その編集加工されたものをライブで再現出来るかと言えば、なかなかそうはいかない。70年代ロックではスタジオ盤に感じ入って、ライブに足を運んで、そのショボさに幻滅すること も少なくなかった。

しかしジャズは違う。確かにライブなので「出来不出来」はあるが、70年代ロックとは次元が違う。やはり、ジャズを楽しむにはライブに足を運ぶに限る。
 
とは言え、そんな優秀なライブを聴かせるライブハウスはそんなに多くはない。しかも、それなりに有名なミュージシャンだとチャージ料も値が張る。そういう時はライブ盤を購入して、家のステレオにて、擬似ライブハウスとして楽しむのも手である。

ジャズのライブ盤は多々あるが、最近、手に入れて、ちょっとヘビー・ローテーションになっているライブ盤がある。George Wallingtonの『Complete Live at the Caf Bohemia』(写真左)。
 
1955年9月の録音。パーソネルは、Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), George Wallington (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。うへ〜っ、錚々たるメンバー。錚々たるメンバーの若かりし頃である。
 

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このアルバムは、先にリリースされ、ライブ盤として定評のある『George Wallington Quintet at the Bohemia』(写真右)のコンプリート盤。CD2枚組。今のところ、米国のみでの発売。2007年に突如再発された。

もともと『George Wallington Quintet at the Bohemia』は、ジャズ・ライブ盤としては定盤。録音年は1955年。ジャズのトレンドは、ビ・バップからハード・バップへ移行。このアルバムは、若かりし頃のDonald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Paul Chambers (b) のテクニック溢れる、溌剌としたライブ演奏を捉えている。

収録されたどの演奏もライブ感溢れる優れものばかり。ビ・バップの様にテクニックを競うアドリブもあれば、ハード・バップの特徴である、良くアレンジされた知的なハーモニーやユニゾンがあり、それぞれのソロは技術を尽くし、その優れたアドリブが堪能出来る。初期ハード・バップ時代の優れたライブ盤と言える。

リーダーの George Wallingtonのピアノはビ・バップ調でありながら、優雅な響きが特徴。決して下品に弾かない。決してテクニックをひけらかさない。優雅な響きと確かなテクニックでしっかりとハード・バップなピアノを聴かせてくれるところがまた良い。

この『Complete Live at the Caf Bohemia』はCD2枚組。総演奏時間は2時間ちょっと。冒頭の「Johnny One Note」からラストの「Bumpkins (Alternate Take)」まで、熱気溢れる、実に楽しいハード・バップな演奏が聴ける。

リクエストの無い、暇な時間帯のジャズ喫茶でマスターの一存で全曲をずっと流したい、そんな感じのするライブ・アルバムです。1955年のライブ・ハウス「カフェ・ボヘミア」にタイム・ワープした様な錯覚を感じる位に臨場感溢れる演奏が実に楽しいです。

 
 

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John Lewis『Improvised Meditations & Excursions』

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ第4弾。ちょっと捻りを効かせた、聴いているジャズ者の方々が、「これ、何て言うアルバム」って、ジャケットを見に来るような、そんなアルバムを、ジャズ喫茶では流したい。ということで、今日は、John Lewis(ジョン・ルイス)である。

ジョン・ルイス。1920年生まれ、2001年没。ディジー・ガレスピー楽団にてデビューし、以降チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスなどと共演。1952年にMJQ(Modern Jazz Quartet)を結成、以来、終生にわたってMJQのリーダー格として活動、ビ・バップを基調にしながら、サロン音楽的な、端正かつクラシカルな音楽性を確立した。

であるが、MJQのルイスとソロでのルイスとは、そのピアノの作風がガラッと変わる。特に、1950年代から60年代のルイスは実に味わい深くて僕は大好きだ。どう味わい深いか、というと、このアルバムを聴いて貰えると直ぐに判る。

『Improvised Meditations & Excursions』(写真左)、邦題は『瞑想と逸脱の世界』。邦題を見ると、物々しくて、ちょっと敬遠したくなるが、収録曲を見て欲しい。

1. Now's the Time
2. Smoke Gets in Your Eyes
3. Delaunay's Dilemma
4. Love Me
5. Yesterdays
6. How Long Has This Been Going On?
7. September Song
 

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そう、ズラーッと並ぶ、ジャズ・スタンダードの数々。このジャズ・スタンダードを弾くルイスが、一番、ルイスの個性を確認することが出来て、大のお勧めである。パーソネルは、John Lewis (p), Percy Heath ,George Duvivier (b), Conny Kay (ds)。

ルイスのピアノは、至ってシンプル。ジャズ・スタンダードの持つ美しい旋律をなぞるように、しかしながら、小粋にインプロビゼーションを展開してい く右手。その右手の展開の隙間に、そこはかとなく、合いの手を入れるような、左手のコンピング。曲の持つ旋律の美しさ、旋律の躍動感を前面に押し出しつつ、ジャジーな色づけを小粋につける。このシンプルさと小粋さが、ルイスのソロの時のピアノの特徴である。

そして、シンプルな展開の底に、しっかりとブルージーな雰囲気と「黒い」ビートが見え隠れして、いかに旋律を追いやすい、シンプルなピアノだからと言って、軽音楽風なカクテル・ピアノ風な演奏にならないところが、ルイスの優れたところ。

それから特筆すべきは、コニー・ケイのドラミング。シンバル・ワーク、特に、シンバルの音色が実に美しい。シンプルで小粋なルイスのピアノに格好のアクセントとなっている。そして、曲によって変わる、ヒースとデュビビエのベース。太くて堅実なビートを供給する。

これぞ、ピアノ・トリオの「お手本的」なアルバムの一枚です。全体の収録時間が37分弱とちょっと短いですが、逆にかえって、冗長とならずに「飽き ない」、かつ、もうちょっと聴きたいと思って、2度ほど、聴き直してしまいます。とにかく、内容のあるピアノ・トリオは、繰り返し聴いても飽きない。そんな基本的なことを思い出させてくれる『瞑想と逸脱の世界』である。
 
 
 
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Denny Zeitlin『Tidal Wave』

ちょっと捻りを効かせた、聴いているジャズ者の方々が、「これ、何て言うアルバム」って、ジャケットを見に来るような、そんなアルバムを、ジャズ喫 茶では流したい。ジャズ者の皆さんが、買うのに躊躇う、手に入れるのに悩む、でも、実のところ、ジャズとしてなかなかの内容のアルバム。そんなアルバム を、ジャズ喫茶で流したい。

このアルバムも、もし僕がジャズ喫茶のマスターだったら、さりげなく流したいアルバムの一枚である。 Denny Zeitlin(デニー・ザイトリン)の『Tidal Wave』(写真左)。

Denny Zeitlin(デニー・ザイトリン)とは、1938年シカゴ生まれのピアニスト。大学時代は、なんと医学を専攻。並行して、作曲と音楽理論を学んだとい う、ジャズ界の知的エリート。流石にリーダー・アルバムなどは僅少、かなり寡作なジャズ・ピアニストです。

でもって、そんな寡作な、精神科医と掛け持ちのジャズ・ピアニストが、なぜ、ジャズ者の世界の中で、名前を留め続けることが出来るのか。それは、彼の端正で硬質でダイナミックなピアノにある。

一聴した時は誰だか判らない。でも、聞き終えた後、何故か心に残る。これが、デニー・ザイトリンのピアノの特徴。何故だか詳しいことは判らないんだけどね。本当に、何故か心に残る、ザイトリンのピアノ。

そのザイトリンが、1983年に残したアルバム。パーソネルは、Charlie Haden (b), Denny Zeitlin (p), John Abercrombie (g), Peter Donald (ds)。特に、John Abercrombieとのコラボが素晴らしい。
 

Tidal_wave

 
唯一ソロによる演奏の「Billie's Bounce」で、ザイトリンのピアノの特徴が判る。端正で硬質でダイナミックなピアノ。加えて、ぎりぎりフリーキーな、それでいて、ジャズの伝統の範囲 内にしっかりと留まった理知的な演奏。この知的、理知的という部分が、ザイトリンのピアノ最大の特徴。

John Abercrombieのギターは、エフェクトを「ガッツリ」効かせた、捻じれに捻れた、プログレッシブなジャズ・ギター。暴力的な感じではあるが、実は 繊細なフレーズの積み重ねが実に素晴らしく、John Abercrombieって、こんなに機微を心得た、陰影、起伏溢れるギタリストだったのか、と感動を覚える位の素晴らしい演奏です。

その変幻自在、プログレッシブなギターを支える、ザイトリンの伝統的で端正で硬質でダイナミックなピアノ。加えて、Charlie Hadenのタイトで重量感のあるベースが支える。そして、Peter Donaldのフリーなドラミングが、他のメンバーの演奏により自由を与え続ける。

このアルバムって、相当水準が高いと思います。1983年、フュージョンの時代が去った、ジャズの「踊り場」の時代。そんな時代に、この高水準な純ジャズの存在。いや〜、ジャズって、本当に懐の深い音楽ジャンルだと、改めて感心することしきり。

こんなアルバムの演奏が、ジャズ喫茶のスピーカーから「さり気なく」流れている。そんな仮想のジャズ喫茶を想像するだけで、なんだかドキドキしてしまいます。もし、このアルバムの存在を知らない頃だったら、僕は、絶対にマスターに思わず訊きにいきますね。「あの〜、このアルバム、誰の何て言うアルバムですか?」。

 
 

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