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2024年1月の記事

2024年1月 8日 (月)

チューリップ『無限軌道』

チューリップは、ビートルズ・フォロワーとしての総決算アルバムとして『僕が作った愛のうた』をリリースの後、レコード会社に押し付けられていたロック・アイドル路線と訣別、チューリップ自身のオリジナリティーとサウンドを極める、長い長いチャレンジの旅に出る。そして早々に、その決意表明的なアルバムをリリースすることになる。

チューリップ『無限軌道』(写真)。1975年4月のリリース。このアルバムは、ビートルズ・フレーバーがメインの音作りをベースとしたアイドル・バンド路線から自ら決別し、チューリップのオリジナリティーとサウンドを極める試行錯誤の旅に出る決「決意表明」みたいなアルバムである。

1曲目の『心を開いて』がその決意表明らしいナンバー。オリジナリティーの追求という点では、2曲目の『私は小鳥』と4曲目の『たえちゃん』。しかし、『私は小鳥』は、ポップな曲調を追求するあまり、当時の歌謡曲そのものになってしまった感がある。その当時、人気歌手だった『あべしずえ』が歌った曲です(あんまりヒットしなかったような思い出があるが)。

『たえちゃん』は、あまりにオリジナリティーに気を使うあまり、曲としてはまとまりが無く、ちょっと冗長になっていますが、個々の音づくりには、高く評価できるものがある。僕にとっては、初めて聴いて以来、この曲は常に隅におけない曲、隠れた名曲です。
 

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8曲目は、18年後、リバイバルヒットとなった『サボテンの花』。このアルバムでの『サボテンの花』がオリジナル。アレンジがきめ細やかで地味なんだが、僕はこのアルバムのバージョンが一番の好み。可愛らしい曲といえば、10曲目の『ある昼下がり』。姫野さんがアコースティック・ギターをバックに、可愛く愛らしく歌う佳作です。

試行錯誤の旅を今後もずっと続けて、二度とビートルズ・フレーバーがメインの音作りをベースとしたアイドル・バンド路線には戻ってこないぞ、という決意を感じるのが最後の『人生ゲーム』。歌詞の中に、サイモンとガーファンクルの『コンドルは飛んでいく』の日本語訳と良く似た部分があるのはご愛敬。当時、チューリップは、結構悩んでいたんだな、と密かに感じてしまう。

この『無限軌道』は、チューリップが硬派なフォーク・ロック路線を走り始めた、記念すべきターニング・ポイントとなったアルバムです。内容的には、前作の『ぼくがつくった愛のうた』とは似ても似つかぬ硬派な内容に、当時のファンや評論家は面食らったようですが、僕は、この『無限軌道』の内容はウエルカム。改めて、チューリップのファンになり直しました。

ちなみに、僕は、この盤からチューリップのオリジナル・アルバムをリアルタイムで体験していくことになります。行きつけのレコード屋さんに予約を入れたのは、高校1年の3学期のことだったなあ。駅前のレコード屋に予約をいれて、発売日当日にゲットのを昨日のことの様に覚えています。
 
 

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チューリップ『ぼくがつくった愛のうた』

チューリップの代表的名盤として、そして、当時、日本のロック雑誌の権威、ミュージック・ライフ誌の「ベストアルバム・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた、我が国フォーク・ロックの古典的名盤『Take Off -離陸-』をものにしたチューリップ。次なるアルバムで、チューリップ・サウンドの確立を捉えることになる。

チューリップ『ぼくがつくった愛のうた』(写真左)。1974年10月のリリース。4枚目のスタジオ録音盤。「心の旅」の大ヒットを受けて、そのご褒美的に、一部の楽曲はイギリスのEMIレコーディング・スタジオとスコーピオ・スタジオでレコーディングしている。

2111年を舞台にしたメンバー5人の子供達が主人公の物語をベースに、収録曲に準えて物語が進行していく「コンセプト・アルバム」。収録された楽曲それぞれ、良く練られたもので、演奏を含めてとても出来が良い。

全英語詞の短い静かで流麗な曲「ひとつの星」がオープニング。続く「私のアイドル」は、ビートルズやビーチ・ボーイズへのリスペクトを感じる、いかにもチューリップらしいロックンロールな曲。後にライヴでの定番曲となる名曲である。そして「なくした言葉」は、ストリングスのアレンジとコーラスワークが際立つバラード曲。

この冒頭の3曲の流れだけでも、この「コンセプト・アルバム」の出来の良さが感じられる。同時発売のヒットシングルである「ぼくがつくった愛のうた」は、チューリップの名曲中の名曲。コーラス・ワーク、姫野さんのボーカル、曲の構成、どれもが「チューリップ」で統一されている。
 

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デビュー当初は財津さんがメインだったが、このコンセプト・アルバムではメンバーの個性が発揮され始めている。吉田彰の「この暗闇の中」、姫野達也の「ここはどこ」、安部俊幸の「踊り娘」、上田雅利の「走れ!ムーン号」。それぞれの個性が反映された、ユニークな楽曲が提供されている。これらが、この「コンセプト・アルバム」の中で、良いアクセントになっている。

チューリップ自身が、ビートルズに大きな影響を受けていることは、本人たちも公言していた。実際にも、そのサウンドや曲調など、ビートルズのエッセンスを感じる部分は多かった。が、チューリップは決して「ビートルズのコピー・バンド」では無い。ビートルズのエッセンスを上手く織り交ぜつつ、チューリップならではオリジナリティーを発揮する。財津さんのソングライティングは絶妙である。

日本のバンドの中で、これだけ、ビートルズのエッセンスを自家薬籠中のものとし、独自の個性を確立したバンドは他には無い。それがチューリップの一番の存在意義であり、チューリップのサウンドが未だに古さを感じさせない所以だろう。この「コンセプト・アルバム」を聴けば、それが良く判る。

このコンセプト・アルバム『ぼくがつくった愛のうた』は、前作『Take Off -離陸-』と併せて、チューリップ・サウンドの確立を捉えた名盤だろう。この2枚は今の耳にも十分に耐える。素晴らしい耐久性を持った日本のフォーク・ロックの傑作である。

当時のLPには、大型ブックレット(絵本)が付いている。これもなかなかの出来なんだが、その分、L P自体の値段も200円ほど高かった。同じLPなのになあ、となんか納得いかなかったのを覚えてます(笑・高校生の身分には数百円は堪える)。

ちなみに、ロンドンでのレコーディングには日本航空が全面協力しており、ブックレットには日本航空のロゴと、全面協力についての記述が掲載されています。これも当時としてはユニークでした。まあ、今では、このタイアップ形態が踏襲されたアルバムは無いですけど(笑)。
 
 

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